書房を展開せられて、もう五周年記念日を迎えられる由、おめでとう存じます。書房主山崎剛平氏は、私でさえ、ひそかに舌を巻いて驚いたほどの、ずぶの夢想家でありました。夢想家が、この世で成功したというためしは、古今東西にわたって、・・・ 太宰治 「砂子屋」
拝復。始終『アララギ』を送って頂いておりながらほんの時々しか読んでいないので甚だすまない気がしております。今度二十五周年記念号を出すので何か書くようとの懇篤な御すすめがありましたので何かと考えてみましたが右様の次第でありま・・・ 寺田寅彦 「書簡(2[#「2」はローマ数字2、1-13-22])」
・・・事変第三周年を迎える日本で、社会的な活動にしたがっている若い婦人たちの数だけでもおびただしいものである。社会的活動への婦人の進出はめざましいし、その必要の意味も、個人的に社会的に加重されてきているのであるけれども、その一つの事実がとりもなお・・・ 宮本百合子 「異性の間の友情」
・・・ わたくしたちは、こうして営々と三百六十五日を生きとおして今日に至っているのだが、さて、平和・民主の一周年を迎えたという晴々とした歓喜の表情は、おたがいの眼の裡にきらめいているだろうか。旧軍事支配権力の無条件降伏は、考える葦、働く蟻であ・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・ もうじき父の一周年になります。母の本はあのようにしてつくられたので、父の記念出版をしたいが、それには様々の困難があり、こまっていたら国民美術協会で大河内正敏氏や石井柏亭その他の人が一冊の『中條精一郎』という本を出して下さる由。私は大変・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ ああいう立札は一周年が過ぎたら取りこめられてもいいのではないだろうか。 用事があって千駄ケ谷の方へ出かけたら、一つの閑静な通りの二ヵ所に、同じ種類の立札があった。けれども、ここの町内のは小さく三角形の頂きをもったものではなくて、四・・・ 宮本百合子 「今日の耳目」
・・・マクシム・ゴーリキイが六十余歳の老齢をもって、去年の革命第十五周年記念祭の時党員となった事実は、私どもの記憶に新たな感銘として印されている。 ところで、これらのプロレタリア新進作家や旧インテリゲンチア作家たちは、それぞれ多種多様な発展の・・・ 宮本百合子 「社会主義リアリズムの問題について」
・・・ 去年もおしつまった十二月四日から一週間日本でも世界人権宣言第二周年の記念週間がもたれた。十二月五日『東京新聞』に総司令部の人権擁護班長ガートスタイナー氏が人権宣言の趣旨について語っていた。「人権とは政治的自由だけを指すものではなく、さ・・・ 宮本百合子 「世界は求めている、平和を!」
・・・革命十周年祝祭の歓びの亢奮とドン・バス事件に対する大衆の憤りの亢奮が新来の自分をも直ちにとらえた。ドン・バスへは是非よろう。旅行に出る前、自分は対外文化連絡協会から石炭生産組合へ紹介状を貰い、まだ地図もよく分からないモスクワの商業区域を歩き・・・ 宮本百合子 「石油の都バクーへ」
・・・そこへ、革命十周年記念祭のお客で日本から来ていた米川正夫、秋田雨雀をはじめ、自分も並んで、順ぐりに短い話をした。キムという、日本語の達者な朝鮮人の東洋語学校の教授が、通訳だ。話すものはテーブルに向って演壇の上で椅子にかけて話す。わきで、大き・・・ 宮本百合子 「ソヴェト文壇の現状」
出典:青空文庫