・・・ 小学教育の事 二 平仮名と片仮名とを較べて、市在民間の日用にいずれか普通なりやと尋れば、平仮名なりと答えざるをえず。男女の手紙に片仮名を用いず。手形、証文、受取書にこれを用いず。百人一首はもとより、草双紙その他、民間・・・ 福沢諭吉 「小学教育の事」
・・・主権在民という憲法にこういう矛盾が含まれていることは日本の歴史の特殊性である。ちょうど人間が胎児であったとき、その成長の過程で、ごく初期の胎生細胞はだんだん消滅して、すべて新しい細胞となって健康な赤ん坊として生れてくる。けれどももし何かの自・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・云々と、民族自立の問題・主権在民の問題も――即ちポツダム宣言と新憲法の実質を左からぐるりと右へひとまわりさせたものにしようとしている。『テラス』や『ロマンス』などのような雑誌が、この頃ルポルタージュと称して戦記ものを記載しているのは、偶・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・偽りない主権在民を、実現したいと思うのである。その現実の力のつよさで、戦争というものの根絶された日本の民主生活の完成を見たいと思うのである。 すべての人民が、今や自分の分別によって「人」たらんとしているのであるけれども、特に、青少年、婦・・・ 宮本百合子 「現実の必要」
・・・それはこんどの憲法を見てもよくわかることですけれども、ああいう「主権在民」の中途はんぱな扱いかたは、私どもが民主を求めて生きている感情に直接影響してきています。 民主主義憲法といいながら、政府は五月一日にそれが実効を発生することを避けま・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・天皇というものの全く特殊な規定が、この主権在民といわれる憲法の中にある日本の封建的な尾は、伝統の中に巨龍の尾のようにのこっている。そしてこの尾のうろこのかげにかくれて今日なお国民を破滅させた軍閥ののこりと反動の力がうごめいている。 そし・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
新聞に、憲法改正草案が発表されたとき、一番奇妙に感じたことは、「主権在民」と特別カッコの別見出しがつけられていたのに、天皇という項があって、その唯一人の者が九つの大権を与えられていることであった。 短い小説一つにしろ、・・・ 宮本百合子 「矛盾とその害毒」
・・・主権在民の憲法に天皇という特種な一項目があって、新聞では大臣も天皇も公僕であるといいながら身分上、経済上そして政治上の特権は十分たもたれているという事実は、日本の民主的生活の道がどんなに過渡的なものであり、まだどっさりと封建の尾をひいたもの・・・ 宮本百合子 「明瞭で誠実な情熱」
・・・一方に、労働調整法が出来かかったりしているが、金融資本を守るためからの失業は誰にとっても脅かしの影となっていて、勤労大衆はまったく主権在民を実現して合理的に生産関係を独占から解放しなければ、生きてゆけないところまで来ているのである。そのきょ・・・ 宮本百合子 「郵便切手」
出典:青空文庫