・・・ 天災地変の禍害というも、これが単に財産居住を失うに止まるか、もしくはその身一身を処決して済むものであるならば、その悲惨は必ずしも惨の極なるものではない。一身係累を顧みるの念が少ないならば、早く禍の免れ難きを覚悟したとき、自ら振作するの・・・ 伊藤左千夫 「水害雑録」
・・・ 山の南側は、太古の大地変の痕跡を示して、山骨を露出し、急峻な姿をしているのであるが、大垣から見れば、それほど突兀たる姿をしていないだろうという事は、たとえば陸地測量部の五万分一の地形図を見ても、判断する事ができる。大垣停車場から、伊吹・・・ 寺田寅彦 「伊吹山の句について」
・・・ 土佐における大地変の最初の記録としては、西暦六八四年天武天皇の時代の地震で、土地五十万頃が陥落して海となったという記録があり、それからずっと後には慶長九年と宝永四年ならびに安政元年とこの三回の大地震が知られており、このうちで、後の二回・・・ 寺田寅彦 「怪異考」
・・・この方面の専門家にとっては地震即地変である。またいわゆる震度の分布という問題についても地質学上の見地から見ればいわゆる「地盤」という事をただ地質学的の意味にのみ解釈する事は勿論の事である。 第四には物理学者の見た地震というものがる。この・・・ 寺田寅彦 「地震雑感」
・・・このように恐ろしい地殻活動の現象はしかし過去において日本の複雑な景観の美を造り上げる原動力となった大規模の地変のかすかな余韻であることを考えると、われわれは現在の大地のおりおりの動揺を特別な目で見直すこともできはしないかと思われる。 同・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・ 地変に関係のある怪異では空中から毛の降る現象がある。これについては古来記録が少なくない。これは多くの場合にたぶん「火山毛」すなわち「ペレ女神の髪の毛」と称するものに相違ない。江戸でも慶長寛永寛政文政のころの記録がある。・・・ 寺田寅彦 「化け物の進化」
・・・こんな地変のために地盤が傾動すれば河流の転位なども当然起こりうるであろう。 もう一度このへんの雪線が少しばかり低下して崑崙の氷河が発達すると、このへんの砂漠がいつか肥沃の地に変わってやがて世界文化の集合地になるかもしれない。 その時・・・ 寺田寅彦 「ロプ・ノールその他」
出典:青空文庫