・・・ 次に地震の問題に移って、地殻内部構造に論及するのは今も同じである。ただ彼は地下に空洞の存在を仮定し、その空洞を満たすに「風」をもってしたのは困るようであるが、この「風」を熔岩と翻訳すれば現在の考えに近くなる。彼はまた地下に「川」や「水・・・ 寺田寅彦 「ルクレチウスと科学」
・・・ロプ・ノールの転位でも事によると地殻傾動が原因の一部となっているかもしれないと思われる。 同じ雑誌にエリク・ノーリンがタリム盆地の第四紀における気候変化を調べた論文がある。これによると、最後の氷河期の氷河が崑崙の北麓に押し出して来て今の・・・ 寺田寅彦 「ロプ・ノールその他」
・・・「諸君、手っ取り早く云うならば、岩頸というのは、地殻から一寸頸を出した太い岩石の棒である。その頸がすなわち一つの山である。ええ。一つの山である。ふん。どうしてそんな変なものができたというなら、そいつは蓋し簡単だ。ええ、ここに一つの火山が・・・ 宮沢賢治 「楢ノ木大学士の野宿」
・・・今や地殻までが裁判長の神聖な裁断に服するのだ。」 二番目の判事が云いました。「実にペンネンネンネンネン・ネネム裁判長は超怪である。私はニイチャの哲学が恐らくは裁判長から暗示を受けているものであることを主張する。」 みんなが一度に・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
・・・山、氷河、および地殻の歴史を語られるにつれて、私たちの心によみがえるのはチンダルの「アルプスの旅より」「アルプスの氷河」などである。どちらも岩波文庫に訳されているのは知られるとおりである。アイルランド生れの物理学者であったジョン・チンダルは・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・ 暖く晴れわたった空を画して、くっきりと見える長い校舎の屋根、その上に懸ってまどろんでいるような雲の、柔かい煙りのような輪郭。 地殻から立ちのぼるあらゆる騒音や楽音、芳香と穢臭とは、皆その雲と空との間にほんのりと立ちこめて、コロコロ・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・此の地殻の上に何処からか生れ出たものは、その出生の地を、彼等の魂のどん底から剥ぎ取る事は出来ないのである。 静かな夜の中に坐して、記憶の裡に蘇返る「祖国」に、慄えるような愛着と、叫び度くなる程の嫌厭と恐怖とを感じる時、私は此の感動が、果・・・ 宮本百合子 「無題」
・・・しかしそれは彼の根が一つの地殻に突き当たってそれを突破する努力に悩んでいるからである。やがてその突破が実現せられた時に、どのような飛躍が彼の上に起こるか。――私は彼の前途を信じている。根の確かな人から貧弱な果実が生まれるはずはない。・・・ 和辻哲郎 「樹の根」
出典:青空文庫