・・・ つまりは世俗の目やすにいい生活というものの基準をおいて、家庭は家庭と代々の凡俗な生き手たちが結論した結論をこの作品の中に知ろうとして、もし現代の若い人々がこの小説にひかれなければならないとしたら、彼等の青春の精神の鋭さと誇りとは、・・・ 宮本百合子 「「結婚の生態」」
・・・この大会で民主的な文学作品について報告する責任をもった佐多稲子は、小説部会の評価が各作品について全く対立的である場合が多い、評論部会は、民主的文学の評価の基準について検討をするように、と要求した。評論部会はそれを課題としたわけであったが、様・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
・・・いろいろ話をきかされて居ると、照子が小さい金入れをちょろまかすのはいかにもありそうなことと思われて来ると共に、当人のその行為に対する心持も、世間でいう善悪の基準など一切ぬきにした自由さにあるらしいことが諒解されて来た。先方の余りの何でもなさ・・・ 宮本百合子 「斯ういう気持」
・・・ 真実に強い文化的基準と新しく見なおした目標で批評がされるようになれば月評は別ものになる。 では、そのプロレタリア文学批評とは、どんなものか? 第一に、どんな小さいどの陣営の作品をとりあげた場合でも、その批評をよむと、ハハア・・・ 宮本百合子 「こういう月評が欲しい」
・・・闇の紙で出した部数が多ければ多いほど、これだけ無理をしているのだからと、次期の割当を増している出版協会の割当方法も奇妙だし、きのうの新聞に出たように、原稿料を基準に本の定価をきめる、という物価庁の意見も腑におちない。文化現象としてよりもイン・・・ 宮本百合子 「豪華版」
・・・又憲法が改正され、民法改正草案が示され労働基準法が審議されつつあります。旧い封建日本はようよう近代の民主的な人民の生活を持とうとしているようにみえます。社会のあらゆる面での男女の差別待遇は、憲法によって確認された基本的人権における男女の平等・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
・・・の悲劇がほんとうに卒業された文学になった、ということは、その社会に新しい人間性の全基準が生れ、新しいモラルのなりたつ社会的条件が確立した場合にだけ云われる。しかも、外部的にそういう社会条件がなり立ったばかりでなく、そのように新しくなった社会・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・まじめに文化・文学の運動にしたがい、創作もして行こうとしている人々は、民主主義文化・文学運動の内をかき乱している不安、無規準、得たいのしれない政治性に影響されて、自分たちの活動の基準をどこにおいたら、たたかれないで育つことができるのかを思い・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・けれども日本の社会の実質がどれほどファシズムの無思想性と反歴史性に毒されているかという証拠は、民主主義運動と同時に、一部の人々が精力的に小林多喜二の生涯と文学に対して、歴史的基準のない「批判」を横行させた事実に見られる。この三年間に、反小林・・・ 宮本百合子 「小林多喜二の今日における意義」
・・・リア文学というものが一つの流派ではなく、本質に於てブルジョア文学の批判的発展者として登場して来たので、この両者の関係でブルジョア文学は初めて自身の理解して来た範囲での文学と言うものを先ずその価値評価の基準から動揺を受けたのであった。 そ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
出典:青空文庫