・・・そうした認識と批判とを没しさせる、最大な原因は、今日の資本主義に基点を置く、ヂャナリズムの然らしめることです。この悪い風潮は黙々として、自己の生産に従事しつゝある、あらゆる階級にまで瀰漫せんとしつゝあります。 私は、児童芸術に没頭してい・・・ 小川未明 「文化線の低下」
・・・食べるということを基点として出立した考である。所が米山の説を聞いて見ると、何だか空々漠々とはしているが、大きい事は大きいに違ない。衣食問題などは丸で眼中に置いていない。自分はこれに敬服した。そう言われて見ると成程又そうでもあると、其晩即席に・・・ 夏目漱石 「処女作追懐談」
・・・ このようにして、自然主義以来、個人というものを基点として創造され、主観的、印象的に評価されて来た近代文学は、新たな社会的・階級的内容に立って創られ、客観的な発展の方向に於て評価を受けるようになって来た。大正十四年『文芸戦線』が創刊され・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・そして肉体の経験、その中でも性的経験だけが信じることの出来る人間性のよりどころ、実在感の基点であるとされている。 たしかに日本の過去の、そして今日の両性生活は不自然な状態におかれている。不必要なきがねや、くだらない体裁、いやしい常識、そ・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・ ここで、考えは、いや応なく、又、それならばどうしたらよいか、と云う基点まで逆戻りをしなければ成らなく成って仕舞ったのです。 実際問題として、彼女も自分も共に満足する解決を見出すには、自分は余り無力でした。 彼女は、今に必要な時・・・ 宮本百合子 「ひしがれた女性と語る」
出典:青空文庫