・・・こうして見ると、直接農村に一般ラジオ加入者が多くなったとは云えず、寧ろ、中農、地主から没落した自作農等の相場への関心或は農産品仲買関係者が、米や繭の売買で幾分かは儲けてラジオでも引こうかという工合になっていることが推察されるのである。 ・・・ 宮本百合子 「「ラジオ黄金時代」の底潮」
・・・実際生産用具はそのように欠乏に欠乏を重ねて来るのに、増産の必要は昂まるし、一方には正規の増産とその配給とを攪乱するような農業会、統制会、闇売買が横行して、農村では近年の一つの病的な社会現象として、物がないのに金はあるという状態になって来た。・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・群集は今しも売買に上気て大騒ぎをやっている。牝牛を買いたく思う百姓は去って見たり来て見たり、容易に決心する事ができないで、絶えず欺されはしないかと惑いつ懼れつ、売り手の目ばかりながめてはそいつのごまかしと家畜のいかさまとを見いだそうとしてい・・・ 著:モーパッサン ギ・ド 訳:国木田独歩 「糸くず」
・・・しかし人身売買はかなり気の咎める商売である。それには何か口実がなくてはならない。そこでニグロは半ば獣だということにされた。また Fetisch という概念がアフリカの宗教の象徴として発明された。呪物崇拝などということは全くのヨーロッパ製であ・・・ 和辻哲郎 「アフリカの文化」
出典:青空文庫