・・・ 科学精神における、こういうような、多種多様で且つ隠微な形のマイナスの侵入は実に危険であると思う。何故なら、科学性の客観的敗北は常にこの盲点を契機として行われ、しかもそれが敗北であることがどうしても自覚され得ないという危険をもっているか・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・弾力のある心、態度の快さに目の覚めるような鮮やかさを感じます。多種な容姿と表情は、子供時代からの両性交際に練れ切った巧なタクトと倶に、彼の周囲を輝やかせますでしょう。そして、其の目前の女性は、宇宙の女人其ものの表象であるかの如く、彼の脳裡か・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・ 若い女性たちの夢は多種多様です。その夢を託す一つのよすがとして、婦人雑誌はどれもこれも争ってけばけばしい表紙をつけてたくさんの服飾写真を載せています。到る処でいろいろな流行歌がうたわれています。アメリカ映画はどんどん入ってきます。銀座・・・ 宮本百合子 「自覚について」
・・・ 民主主義文学の作品は、多種多様な題材をとらえて、千変万化の局面を描き出さなければならない。どんどん労働者作家がそだてられなければならない。これはすべての人の要求である。しかし、現実の問題として、一九四六年以来、いくたりかのびて来ている・・・ 宮本百合子 「事実にたって」
・・・ ところで、これらのプロレタリア新進作家や旧インテリゲンチア作家たちは、それぞれ多種多様な発展の段階にあって、プロレタリアートの世界観とその複雑多岐な実践に結びつけられ建設に寄与するものであって、社会主義建設の見とおしと方向において一致・・・ 宮本百合子 「社会主義リアリズムの問題について」
・・・シェークスピアの戯曲の登場人物は実に多種多様で、社会の現実そのもののように豊富なのを特徴としている。人間の可憐さ、狡猾さ、奸智、無邪気さ、あらゆる強烈な欲望が描かれていて、そこに登場する婦人も、決して一様ではない。マクベス夫人のようにおそろ・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・未亡人という文字は単調だが、それを実質づける多種多様な立場の孤立した母、妻たちが、現代の歴史のあらゆる角度から、人間らしい生活の再建の可能を確保しようと歩み出し発言していることは、日本の私たちとして、真剣にくみとるべき態度だと思う。現代の世・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
・・・こんにちの社会的現実は複雑で、労働者の闘争の方法も多種多様である。それをつっこんでゆけば、「もう日本の金融資本の実体を文学の上にかかなければならぬと思うのです。」「社会を描かなければならない。」それを書かないで「本当のストライキの情勢はかけ・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・『甲陽軍鑑』がこれらの部分において語っていることは、非常に多種多様であるが、しかしそれを貫いて一つの道徳的理想が動いているように思われる。軍法の巻においてさえも、その主要な関心は、戦術や戦略の末ではなくしてその「もと」を探ることにあった・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・近代文化が多種多様な内容を持っていただけに、その計算の結果も定めて複雑なものだろう。 和辻哲郎 「世界の変革と芸術」
出典:青空文庫