・・・ と筵の上を膝で刻んで、嬉しそうに、ニヤニヤして、「初茸なんか、親孝行で、夜遊びはいたしません、指を啣えているだよ。……さあ、お姫様の踊がはじまる。」 と、首を横に掉って手を敲いて、「お姫様も一人ではない。侍女は千人だ。女郎・・・ 泉鏡花 「茸の舞姫」
・・・ 私のところへ夜遊びに来ると、きっと酒の香をぷんぷんさせて、いきなり尻をまくってあぐらをかきます。そして私が酒を呑まぬのを冷やかしたものでございます。 そしてまた、しきりと女房を持てとすすめました。そのついでにどうかいたしますと、『・・・ 国木田独歩 「女難」
・・・とぼとぼと瞬く灯の下で活字を追っていると、窓の外を夜遊びして帰った寮生の連中が、「ローベンはよせ」「糞勉強はやめろ」などと怒鳴りながら通って行く。その声を聞きつつ何か勝利感に似たものをハッキリと覚えている。 読書は自信感を与えるものであ・・・ 倉田百三 「学生と読書」
・・・新聞記事によると、B猫が不良で夜遊び昼遊びをして困るという飼主夫人の証言。これだけである。このいずれも当面の問題に対しては実に貧弱なデータで、これだけからなんらの確からしい結論も導き出せないことは科学者を待たずとも明白なことである。しかし、・・・ 寺田寅彦 「ある探偵事件」
・・・以前奉公して居た頃も稀には若い衆に跟いて夜遊びに出ることもあった。彼も他人のするように手拭かぶって跟いて行った。帰る時にはぽさぽさとして独であった。若い衆はみんな自分の女を見つけると彼を棄ててそこらの藪や林へこそこそと隠れて畢う。太十はどの・・・ 長塚節 「太十と其犬」
・・・酒を飲むことと、夜遊びが唯一のたのしみで、本さえ手に入れることはできない。うっかり本を読むとなまいきだとか、変りものだとかいわれるばかりでなく、東京から『改造』をとって読むようなものは、村の駐在の注意人物とされる。自分はもっと光明のある生活・・・ 宮本百合子 「今日の文化の諸問題」
出典:青空文庫