・・・ 新思想の本元の西洋へ行って見ると、かえって日本人の目にばかばかしく見えるような大昔の習俗や行事がそのままに行なわれているのはむしろ不思議である。 これはどちらがいいか、議論をするとわからなくなるにきまっている。 ただこのごろの・・・ 寺田寅彦 「田園雑感」
・・・「あたし、もう大昔からあなたのことばかり考えていましたわ」「本当ですか、本当ですか、本当ですか」「ええ」「そんならいいでしょう。結婚の約束をしてください」「でも」「でもなんですか、僕たちは春になったら燕にたのんで、み・・・ 宮沢賢治 「シグナルとシグナレス」
・・・ 昔々ずうっと大昔、まだ人間が毛むくじゃらで、猫のような尻尾を持っていた時分に――部落の年寄達はきっとこういう言葉を使った。――巨人が退屈まぎれに造ったのだというS山を正面に、それから左右に拡がって次第次第に高く立派になっている山並みに・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
・・・ 大昔は穴居していた人間。それから城廓とそのぐるりの小舎に住んでいた人々。市民の家屋というものが、都市に出現するようになってから、われわれの文化史は重大な変化を経験しました。この変化につれて「家を建てる人」の社会における意味も一世紀ごと・・・ 宮本百合子 「よろこびの挨拶」
出典:青空文庫