・・・ところが荼吉尼法は著聞集に、知定院殿が大権坊という奇験の僧によりて修したところ、夢中に狐の生尾を得たり、なんどとある通り、古くから行われていたし、稲荷と荼吉尼は狐によって混雑してしまっていた。文徳実録に見える席田郡の妖巫の、その霊転行して心・・・ 幸田露伴 「魔法修行者」
・・・これすなわち宗祖家康公が小身より起りて四方を経営しついに天下の大権を掌握したる所以にして、その家の開運は瘠我慢の賜なりというべし。 左れば瘠我慢の一主義は固より人の私情に出ることにして、冷淡なる数理より論ずるときはほとんど児戯に等しとい・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
新聞に、憲法改正草案が発表されたとき、一番奇妙に感じたことは、「主権在民」と特別カッコの別見出しがつけられていたのに、天皇という項があって、その唯一人の者が九つの大権を与えられていることであった。 短い小説一つにしろ、・・・ 宮本百合子 「矛盾とその害毒」
・・・憲法というものは、何処の国でも、支配者の大権と共に人民の権利をも規定したものであり、民主主義の発達した国であればある程、人民の権利に対する規定は全面的で詳細を極めている。男女にかかわらず人民が、その国の社会に幸福に生きるために必要な諸権利と・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫