・・・詳しくいえば、大西洋の海面の恒久の退屈さでありアラン島民の生活の永遠の退屈さである。退屈というのが悪ければ深刻な憂鬱である。それを観客に体験させる。 始めから終わりまで繰り返さるる怒濤の実写も実に印象の強く深い見ものである。波の音もなか・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・ 近頃またアメリカでは飛行機で大西洋を飛び越し、運送船の力を借らず航空隊を戦場に輸送しようという計画がだいぶ真面目に研究されており、それについては大西洋の気象という事が重要な問題になるのである。この事については『ローマ字世界』の十二月号・・・ 寺田寅彦 「戦争と気象学」
・・・ ナポレオンが運命の夕べに南大西洋の孤島にさびしく終わってもその偉大さに変わりはなかった。しかしアインシュタインのような仕事にそのような夕べがあろうとは想像されない。科学上の仕事は砂上の家のような征服者の栄華の夢とは比較ができない。・・・ 寺田寅彦 「相対性原理側面観」
・・・ 二十年前に大西洋を渡ってニューヨークへ着きホボケンの税関の検閲を受けたときに、自分のカバンを底の底までひっくり返した税関吏が、やはりこのチューインガムを噛んでいた。これが自分のチューインガムというものに出会った最初の機会であった。勿論・・・ 寺田寅彦 「チューインガム」
・・・ 少し唐突ではあるが地球上における蚯蚓の分布を調べた学者の研究の結果によると、ある種の蚯蚓は、東は日本から海を越えて大陸に、欧亜大陸を横断して西はスペインの果てまで広がり、さらに驚くべき事には大西洋を渡って北米合衆国の東部にまでも分布さ・・・ 寺田寅彦 「比較言語学における統計的研究法の可能性について」
・・・ 一八六七年の八月に始めて大西洋を越えてアメリカの旅をした。帰ってみると彼の郷里ではチフスが流行していたので家族とともに五マイル離れた Tofts へ転地し、父のレーリー卿がただ一人 Terling に止まっていた。これが動機となって後・・・ 寺田寅彦 「レーリー卿(Lord Rayleigh)」
・・・るでもなし、ヒルテイという名を云う人も一人だってあるでなし、実は私も少し意外に感じたので〔以下原稿数枚なし〕は町をはなれて、海岸の白い崖の上の小さなみちを行きました、そらが曇って居りましたので大西洋がうすくさびたブリキのように見え、・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
出典:青空文庫