・・・ナチスは、その火事を機会として、ドイツ中の共産党員、社会主義者、民主論者、平和論者、自由主義者、ユダヤ人の大量検挙をはじめたのであった。ヒトラーの手先がミュンヘンにも入ってきて、公共建物のすべての屋根に気味わるい卍の旗がひるがえることになっ・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・ 日本のファシズムは、本年に入ってから、特に国鉄をはじめとして大量の人員整理をはじめてから、ひどい勢いで各方面で人民生活をかみやぶりはじめました。 わたしたちの民族独立への希望や、文化の自立への希望――つまり独立した社会人として当然・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・けれども、時局の要求する生産拡充への大努力によって重工業、化学、食料、織縫などには、大量に女の力が吸収されつつある。全国に十万人も熟練工が不足を告げているという事実は、今日の大問題とされているのである。処々の大工場、実務学校などで熟練工の養・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・衣料関係の労働は、こういう大量の既製品製作ばかりではない。金モール細工をする人、刺繍をする人、さけた布地をつぐ専門家、大体それは女の仕事であった。或は、立って働くには不便な不具の男の仕事とされた。アンデルセンの「絵のない絵本」の一番初めの話・・・ 宮本百合子 「衣服と婦人の生活」
・・・インガは――ソヴェトの民衆は、大量生産のやすいものが買えることだけで満足してはならないと思った。その物には新しい美が、プロレタリアート文化の輝きが加えられていなければならない。インガは生産に対して、そういう進歩的な意見をもって服型一つのため・・・ 宮本百合子 「「インガ」」
・・・ 政府によって言明された大量馘首政策が比較的ゆるやかなテンポで行われているのも勤労階級の組織力によっておされているからです。最も退嬰的であると考えられていた教員、全逓・官公庁の職員も婦人をこめて今は前線に進んでいます。農民組合は日本全国・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
・・・をやって支配階級の大量的殺人を援助し、ストライキを逃げ、階級意識を眠らす出征兵士慰問金をかき集める役をつとめるとしたら、果してわれわれは何事をなし得るであろうか! 地方の農村・小都市で封建性は強く日常生活の些細な感情の中にまで残っている・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
・・・ 農村の貧困は事実、一冊の雑誌さえ容易に買えない経済状態に農民をおとしいれているが、資本主義の生産はすべて大量に生産されたものが安いから雑誌でも部数を多く刷るものが比較的安く即ち同じ三十銭でうんと頁を多く、グラフまで入れて作れるという訳・・・ 宮本百合子 「今日の文化の諸問題」
・・・一九五〇年の十月、日本全国で二十代の男女労働者の大量が、「政治的思想的立場を理由にして、つまり国の憲法と労働関係法規とに違反して首切られました」、二十代の全国の学生は、同じく「政治的思想的立場を理由にして」追放されようとしている教授を擁護し・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・女のひとの書いた本は相当どっさり出ている。大量に売れている。毎日の新聞に女性の著書の広告が出ていない日はないような有様だし、すこし大きい本屋ではこの頃婦人の書いた本だけ並べた場所をこしらえたりしている。文学作品も多いけれども、はっきりそうと・・・ 宮本百合子 「女性の書く本」
出典:青空文庫