・・・(天罰は立ち処じゃ、足四本、手四つ、顔で、代官婆は、近所の村方四軒というもの、その足でたたき起こして廻って、石松が鉄砲を向けたままの、そのありさまをさらしました。――夜のあけ方には、派出所の巡査、檀那寺の和尚まで立ち会わせるという狂い方でご・・・ 泉鏡花 「眉かくしの霊」
・・・夫に逆いて天罰を受く可らずと言えば、妻を虐待して神罰を被る勿れと、我輩は言わんと欲する者なり。一 兄公女公は夫の兄弟なれば敬ふ可し。夫の親類に謗られ憎るれば舅姑の心に背て我身の為には宜からず。睦敷すればの心にも協う。又あいよめを・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・――さもなければジュピターはたちどころに天罰をくだすだろう。奴隷自身の自由のための奮闘は、所有者にとって反逆とうけとられる。反逆という観念は、所有者の政策に反した。イカルスを死なせ、プロメシウスをさいなむような残忍さで、主人の怒りは才能と勇・・・ 宮本百合子 「なぜ、それはそうであったか」
・・・彼は伊勢の神宮へ行って、伝統的な迷信の中心である伊勢の神宮に、真に尊敬すべき何の実体も蔵されていないことを証明するために、御簾をステッキの先で上げて天罰というものの存在しないことを証明した。彼は進歩性の故に暗殺されなければならなかった。なぜ・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・たとえば人間の道理の一例として、彼は、「身持が身の程を超えれば天罰を蒙る」という命題をかかげる。これはギリシア人などが極力驕慢を警戒したのと同じ考えで、ギリシアにおいても神々の罰が覿面に下ったのである。しかし彼はそのあとへ、「位よりも卑下す・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫