・・・ましてや、性的欲望は、その機能が食慾と同じように、それよりももっと強く人間の社会的な反応であるセコンド・オーダ・システムの影響を受ける。好き嫌いをぬきにしては少くとも自主的な性的機能は発揮されない。好き嫌いの感情を否定した性的交渉というもの・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・答「好き嫌いということになると、大へんに内容が綜合的なものだからなかなか難しいけれど、どの作家が女を書くだろうかといえば、そうネ、菊池寛さんなんかがさっきいったような微妙な限界性の範囲内ではいきいきと金持の娘や奥さんや事務員などを書かれ・・・ 宮本百合子 「不満と希望」
・・・あれこれの通に嚇かされず自分の本当の好き嫌い、よさわるさを判断としてもっていてこそ趣味があるといえようし、教養があるといえよう。 常識的であるということと実際的であるということとは、目前の結果から物をいって評価するところで互に非常に似通・・・ 宮本百合子 「山の彼方は」
出典:青空文庫