・・・西宮さんがそんな虚言を言う人ではないと思い返すと、小万と二人で自分をいろいろ慰めてくれて、小万と姉妹の約束をして、小万が西宮の妻君になると自分もそこに同居して、平田が故郷の方の仕法がついて出京したら、二夫婦揃ッて隣同士家を持ッて、いつまでも・・・ 広津柳浪 「今戸心中」
・・・或は男子は分家して一戸の主人となることあるゆえ女子に異なりと言わんかなれども、女子ばかり多く生れたる家にては、其内の一人を家に置き之に壻養子して本家を相続せしめ、其外の姉妹にも同様壻養子して家を分つこと世間に其例甚だ多し。左れば子に対して親・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・世間或は之を見て婦人の嫉妬など言う者もあらんなれども、凡俗の評論取るに足らず、男子の獣行を恣にせしむるは男子その者の罪に止まらず、延いて一家の不和不味と為り、兄弟姉妹相互の隔意と為り、其獣行翁の死後には単に子孫に病質を遺して其身体を虚弱なら・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・わたくしの母がそうであったような、わたくしの二人の姉妹が今でもそうであるような、ただ当り前の田舎の女でございます。その田舎の女とはどんな物かと申しますと、恋の実体を夫婦と云う事から引き放して考えることの出来ない女だと申すのでございます。これ・・・ 著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外 「田舎」
・・・ アジアの姉妹たちよ。そして日本の女性たちよ。アジアの地図の大半の土地からは、わたしたちが愛した者の最期のうめきがつたわってきます。わたしたちはそのような日本という祖国に生きて、毎日の生活苦と闘いながら同時に人類的なこの苦痛の克服につい・・・ 宮本百合子 「新しいアジアのために」
・・・を序文とともによんで感じることだし、ジェーン・オウスティンやブロンテ姉妹の生涯の実際を見ても感じられる。二十世紀の初頭、イギリスでヴィクトリア女皇の治世時代、いわゆるヴィクトーリアンの風俗が、女らしさの点でどんなに窮屈滑稽、そして女にとって・・・ 宮本百合子 「新しい船出」
・・・そこで姉妹は長太郎を先に立てて歩き出した。 ようよう西奉行所にたどりついて見れば、門がまだ締まっていた。門番所の窓の下に行って、いちが「もしもし」とたびたび繰り返して呼んだ。 しばらくして窓の戸があいて、そこへ四十格好の男の顔がのぞ・・・ 森鴎外 「最後の一句」
・・・二人は午餉を食べながら、身の上を打ち明けて、姉妹の誓いをした。これは伊勢の小萩といって、二見が浦から買われて来た女子である。 最初の日はこんな工合に、姉が言いつけられた三荷の潮も、弟が言いつけられた三荷の柴も、一荷ずつの勧進を受けて、日・・・ 森鴎外 「山椒大夫」
・・・彼らの話に拠ると、二人の家は村の南北に建っていて、二人の母は姉妹で、勘次の母は姉であるにも拘らず、秋三の家から勘次の父の家へ嫁いだものであった。けれども此の南北二家は親戚関係の成り立った当夜から、既に絶縁同様になっていた。と云うのは、秋三の・・・ 横光利一 「南北」
・・・母は五人姉妹の下から二番目で、四人もあるその伯母たちの子供らが、これがまたそれぞれ沢山いた。一番上の大伯母は、この村から三里も離れた城のある上野という町にいたが、どういうものだか、この美しい伯母にだけは、親戚たちの誰もが頭が上らなかった。色・・・ 横光利一 「洋灯」
出典:青空文庫