・・・竹馬の友の万年博士は一躍専門学務局長という勅任官に跳上って肩で風を切る勢いであったから、公務も忙がしかったろうが、二人の間に何か衝突もあったらしく、緑雨の汚ない下宿屋には万年博士の姿が余り見えなかった。何かにつけて緑雨は万年博士を罵って、愚・・・ 内田魯庵 「斎藤緑雨」
・・・父が四十で浦和の学務部長をしていたときに私が生れて、あとにも先にも、子供といえば私ひとりだったので、父にも母にも、また周囲の者たちにも、ずいぶん大事にされました。自分では、気の弱い淋しがりの不憫の子のつもりでいたのですが、いま考えてみると、・・・ 太宰治 「誰も知らぬ」
・・・二博士が余の意見を当局に伝えたる結果として、同日午後に、余はまた福原専門学務局長の来訪を受けた。局長は余に文部省の意志を告げ、余はまた局長に余の所見を繰返して、相互の見解の相互に異なるを遺憾とする旨を述べ合って別れた。 翌十二日に至って・・・ 夏目漱石 「博士問題の成行」
・・・今日学務においてもっとも大切なることなれば、いささか余が所見を述ること左の如し。各地方小学教師のために備考の一助ともならば幸甚のみ。 小学教育の事 二 平仮名と片仮名とを較べて、市在民間の日用にいずれか普通なりやと尋れ・・・ 福沢諭吉 「小学教育の事」
・・・級全体が選挙して、文化委員、衛生委員、学務委員というものを何人かずつきめる。 その委員たちが、みんなといろいろ相談し、学校の湯呑場、手洗場が清潔かどうかということから、先学期は、どの課目が級全体としておくれたから、今学期はそれをどうとり・・・ 宮本百合子 「従妹への手紙」
・・・ 学年が進むと、級の日常生活は男女生徒の衛生委員、経済委員、学務委員、社会活動委員の活動によって実質的に進められてゆくようになるのだ。 だが、ここに微妙な現象が、学級の進むにつれて起って来る。 級の小さい頃は漠然と仲よしで一組に・・・ 宮本百合子 「砂遊場からの同志」
出典:青空文庫