・・・自分の出席した四つのコロキウムのそれぞれの雰囲気は学科の性質から来る特徴もあるにはあるであろうが結局はその集会を統率する中心人物の人柄そのものによって濃厚に色づけられているのであった。 次の冬学期には上記の先生方の外に、ヘルメルトの「地・・・ 寺田寅彦 「ベルリン大学(1909-1910)」
・・・ こんなふうで、自分の中学においての成績は三年ごろまではまず中ぐらいのところであったが、それから後は佳いほうであったと言えよう。学科目に対してもあまり好ききらいはなく、かなり一様の点数を得ていたが、ただ習字だけはどうしても下手であった。・・・ 寺田寅彦 「わが中学時代の勉強法」
・・・そこで愈英文科を志望学科と定めた。 然し其時分の志望は実に茫漠極まったもので、ただ英語英文に通達して、外国語でえらい文学上の述作をやって、西洋人を驚かせようという希望を抱いていた。所が愈大学へ這入って三年を過して居るうちに、段々其希望が・・・ 夏目漱石 「処女作追懐談」
・・・僕の他の教師であるところの、ポオやドストイェフスキイやから、丁度その同じ学科だけを学んだやうに。 元来、僕は気質的にデカダンスを傾向した人間である。僕がポオやドストイェフスキイに牽引されるのも、つまりは彼等の中に、異常性格者的なデカダン・・・ 萩原朔太郎 「ニイチェに就いての雑感」
・・・嘉永の季、亜美利駕人、我に渡来し、はじめて和親貿易の盟約を結び、またその好を英、仏、魯等の諸国に通ぜしより、我が邦の形勢、ついに一変し、世の士君子、皆かの国の事情に通ずるの要務たるを知り、よって百般の学科、一時に興り、おのおのその学を首唱し・・・ 福沢諭吉 「慶応義塾の記」
・・・「なるほどそれに狩猟だなんて、ずいぶん高尚な学科もおやりですな。私の方ではまあ高等専門学校や大学の林科にそれがあるだけです。」「ははん、なるほど。けれどもあなたの方の狩猟と、私の方の狩猟とは、内容はまるでちがっていますからな、ははん・・・ 宮沢賢治 「茨海小学校」
・・・字引をひくと、生態学は生物と外囲及び生物と他の生物との関係を研究する学科、という説明がある。そういう自然科学の一部門の用語である。「結婚の生態」と云うつなげかたも何か妙だが、そこにはその小説の作者が、結婚というごく社会的な内容の対象を、テー・・・ 宮本百合子 「生態の流行」
・・・ お行儀を教えたり、根気のいる初等学科を教えたりすることは、皆、児童心理を専攻した家庭教師にまかされています。ロザリーと子供は、互から愉快ばかりを感じ合うものとして生活したのです。 ところが、長男が小学に入る頃から、先ず良人のハリが・・・ 宮本百合子 「「母の膝の上に」(紹介並短評)」
・・・「家事整理の傍ら、受験勉強をなし、再び高等学校の入学試験に応ず。学科試験には優良の成績で及第したが、体格検査の時、風邪をひいていたため、病弱修学に堪えざるものとして不合格となる。体格の再検査を願ったが許されなかった。」 一九〇九年。三度・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・ずっと飛び離れて、神学科の寺院史や教義史がある。学期ごとにこんな風で、専門の学問に手を出した事のない子爵には、どんな物だか見当の附かぬ学科さえあるが、とにかく随分雑駁な学問のしようをしているらしいと云う事だけは判断が出来た。しかし子爵はそれ・・・ 森鴎外 「かのように」
出典:青空文庫