・・・その他 学童数名。 所。津軽半島、海岸の僻村。 時。昭和二十一年、四月。 第一場舞台は、村の国民学校の一教室。放課後、午後四時頃。正面は教壇、その前方に生徒の・・・ 太宰治 「春の枯葉」
・・・それに比べて、求める心のないうちから嘴を引き明けて英語、ドイツ語と咽喉仏を押し倒すように詰め込まれる今の学童は実にしあわせなものであり、また考えようではみじめなものでもある。 子供の時分にやっとの思いで手にすることのできた雑誌は「日本の・・・ 寺田寅彦 「読書の今昔」
・・・必ず比較をされなければならないいまの学童たちの内奥からの反響です。 2 狼森と笊森、盗森人と森との原始的な交渉で、自然の順違二面が農民に与えた永い間の印象です。森が子供らや農具をかくすたびに、みんなは「探しに行くぞお」と叫び・・・ 宮沢賢治 「『注文の多い料理店』新刊案内」
・・・疎開児童は田舎へ行って爆弾からは護られたけれども空腹からは護られませんでした。疎開学童は働く楽しみのために農家を手伝ったのではなくて、そうすれば食物を貰えるから、その目的のために働きました。それでも疎開児童が帰って来たときに、親は涙をこぼす・・・ 宮本百合子 「美しく豊な生活へ」
・・・ 冬の寒いとき、そして最も日本的な梅雨のふりつづくとき、撮影もしにくい光線と湿気との中で、ゴム長靴マント姿の学童たちの生活はどのように営まれているか。交通事故の防止のために市が子供らに払っている注意、子供ら自身の身につけている訓練。それらの・・・ 宮本百合子 「映画の語る現実」
・・・学校へゆけない学童のふえているきょう。人民の生活をこういう状態におとしておく政府が、世界を攪乱する戦争挑発に協力していないという証拠を、わたしたちは、どこに見出すことができるでしょうか。 みなさま。 平和のために、というひとつのねが・・・ 宮本百合子 「国際婦人デーへのメッセージ」
予選をとおった十八篇の原稿が回されてきた。そのなかでは「電池」が一番すぐれている。落付きをもった筆で、いきいきと今日の学童の生活雰囲気、その間におこる小事件が描かれ、歪んだ苦しい社会相もそのかげに映しだされている。はじめ学・・・ 宮本百合子 「選評」
・・・その上学童の知能は低下したからと、文部省はこの新学期に、四学年用のものをのぞいて数学の教科書『さんすう』の内容を一学年ずつくり下げたものにして与えた。それも一般にはしらさずこっそりやって、父兄をおどろかし、子供たちをがっかりさせている。学童・・・ 宮本百合子 「平和をわれらに」
・・・ 三度目の時は学校の退けるときで、皆の学童が包を仕上げて礼をしてから出ようとすると、教師は吉を呼び止めた。そして、もう一度礼をし直せと叱った。 家へ走り帰ると直ぐ吉は、鏡台の抽出から油紙に包んだ剃刀を取り出して人目につかない小屋の中・・・ 横光利一 「笑われた子」
出典:青空文庫