・・・板垣退助を戴いた自由党が全盛の時代であったので、軍人の子供である自分は、「官権党の子」だという理由でいじめられた。東京訛が抜けなかったために「他国もんのべろしゃ/\」だと云っていじめられた。そうして、墨をよこさなければ帰りに待伏せすると威か・・・ 寺田寅彦 「鷹を貰い損なった話」
・・・としたのがあったのを覚えている。官権党対自由党の時代であったのである。今のブル対プロに当たるであろう。歴史は繰り返すのである。「諸学須知」「物理階梯」などが科学への最初の興味を注入してくれた。「地理初歩」という薄っぺらな本を夜学で教わっ・・・ 寺田寅彦 「読書の今昔」
・・・しかるに狭量神経質の政府は、ひどく気にさえ出して、ことに社会主義者が日露戦争に非戦論を唱うるとにわかに圧迫を強くし、足尾騒動から赤旗事件となって、官権と社会主義者はとうとう犬猿の間となってしまった。諸君、最上の帽子は頭にのっていることを忘る・・・ 徳冨蘆花 「謀叛論(草稿)」
出典:青空文庫