・・・と聞いては予は其美風に感嘆せざるを得ない、始めて此の如き美風を起せる人は如何なる大聖なりしか、勿論民族の良質に基くもの多からんも、又必ずや先覚の人あって此美風の養成普及に勉めたに相違あるまい、栽培宜しきを得れば必ず菓園に美菓を得る如く、・・・ 伊藤左千夫 「茶の湯の手帳」
・・・また女は、羞恥を知り、慎みて宜しきに合う衣もて己を飾り、編みたる頭髪と金と真珠と価たかき衣もては飾らず、善き業をもて飾とせん事を。これ神を敬わんと公言する女に適える事なり。女は凡てのこと従順にして静かに道を学ぶべし。われ、女の、教うる事と、・・・ 太宰治 「ろまん燈籠」
・・・非常に面白いお伽噺の話の節が、手際よくきびきびと運ばれて行く、そのテンポの緩急が宜しきを得ている。色々の美しいタチングな場面が丁度そのお伽噺の挿画のように順々にめくられて行く、そうした美しい挿画が数え切れないほど沢山あるのである。例えば家な・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(5[#「5」はローマ数字、1-13-25])」
・・・日本の女子に権力なしと言う其原因は様々なれども、女子が家に在るとき父母の教その宜しきを得ず、文字遊芸などは稽古させても経済の事をば教えもせず、言い聞かせもせず、態と知らせぬように育てたる其報は、女子をして家の経済に迂闊ならしめ、生涯夢中の不・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
出典:青空文庫