・・・これまで常識の中に欠けていた結婚の生理に関する知識や優生の知識が、この頃いろいろなところで語られているとすれば、それは躊躇せず生活というものを理解してゆく実力の中へとり入れて行くべきだと思う。そして真の優良な結婚というものは、それらを条件と・・・ 宮本百合子 「結婚論の性格」
・・・そこに、誰しも新しい政府を思い、その順序として選挙を思い、しかも、真に人民生活の向上をはかる実力ある、自分たちの政治を渇望するのである。偽りない主権在民を、実現したいと思うのである。その現実の力のつよさで、戦争というものの根絶された日本の民・・・ 宮本百合子 「現実の必要」
・・・現在それで食わないにしろ職業としてやってゆけるだけの実力があるということこそ、ある仕事をもつことで女に心と生活のよりどころを与える必須条件だと思わずにはいられません。そして、それを職業としてゆくからこそ、道楽では踏み切れないところをも踏み切・・・ 宮本百合子 「現実の道」
・・・ レーニンはソヴェト同盟が重工業を振興させ、労働の生産力・技術を増大させることによって、実力的にヨーロッパ資本主義国を追いぬかなければならないという点に、絶えず全ソヴェトのプロレタリアートの注意を引きつけて来た。五ヵ年計画の基礎はこの線・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・が切れたら、たががゆるんでお目出たくなって夜は早く眠がるし、少し動くとくたびれるし、気はのんびりしたし、つまり実力に戻って、うち中気嫌がよくなりました。今になって白状に及んだところをみると、みんな相当私のウワバミ元気にはヘコたれていたらしい・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・大人のように世界の事情を考えて日本の実力と照らし合わせ、国民の犠牲を考え、一部の特権者の指導する帝国主義の侵略戦争はまちがっていると考えた者は、国賊として罰せられました。幼な児の如く信じた国民がその結果としておかれた今日の生活の破綻の中から・・・ 宮本百合子 「今度の選挙と婦人」
・・・の意味をもっているケリリスの活動やドーデの活躍に余地を与えなければならなかった原因は、フランス経済・政治のどんな紛乱からであったかという事実までを、現実にそれがあるとおりに理解するだけ、私たちの文化の実力は旺盛な状態に置かれていると云い得る・・・ 宮本百合子 「今日の生活と文化の問題」
・・・なさを与え、根気のつよくない多数の者が、その無価値を知りつつ、半インテリゲンツィア養成の政策的方向におし流されて他力本願的日常に落ちて行ったのであるが、ヒューマニズムの問題の旺盛化につれてつよまった非実力な抽象論化の根本的モメントは、果して・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・何んでも僕の聞いたところでは、世界の数学界の実力は、年齢が二十歳から二十三四歳までの青年が握っていて、それも、半年ごとに中心の実力が次ぎのものに変っていく、という話を、ある数学者から聞いたことがありますが、日本の数学も、実際はそんなところに・・・ 横光利一 「微笑」
・・・それは旧来の武家が伝統の上に立っていたのに対して、新しい武家が実力の上に立っているという点である。鎌倉時代の幕府政治を作り出した武家は、「源氏」というごとき由緒の上に立っていた。武家の棟梁とその家人との関係が、全国的な武士階級の組織の脊梁で・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫