・・・しかし国語や記載科学の素養が足りなかったので、しばらくアーラウの実科中学にはいっていた。わずかに十六歳の少年は既にこの時分から「運動体の光学」に眼を付け初めていたという事である。後年世界を驚かした仕事はもうこの時から双葉を出し初めていたので・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・ アインシュタインの考えでは、若い人の自然現象に関する洞察の眼を開けるという事が最も大切な事であるから、従って実科教育を十分に与えるために、古典的な語学のみならず「遠慮なく云えば」語学の教育などは幾分犠牲にしても惜しくないという考えらし・・・ 寺田寅彦 「アインシュタインの教育観」
・・・ 農科の実科の学生が二三人乗っていた。みんな大きな包みのようなものを携えている。休日でもないのにどこへ行くのだろうと思って気をつけていた。すると途中からもう一人同じ帽章をつけたのが乗り込んで、いきなり入り口に近く腰掛けていた一人の肩をた・・・ 寺田寅彦 「写生紀行」
出典:青空文庫