・・・カントに宿題は残らない。然るにニイチェはどこまで行つても宿題ばかりだ。ニイチェの思想の中には、カント流の「判然明白」が全く無い。それは詩の情操の中に含蓄された暗示であり、象徴であり、余韻である。したがつてニイチェの善き理解者は、学者や思想家・・・ 萩原朔太郎 「ニイチェに就いての雑感」
・・・「きょうはみなさんは通信簿と宿題をもってくるのでしたね。持って来た人は机の上へ出してください。私がいま集めに行きますから。」 みんなはばたばた鞄をあけたりふろしきをといたりして、通信簿と宿題を机の上に出しました。そして先生が一年生の・・・ 宮沢賢治 「風の又三郎」
・・・ 雲がちぎれ、風が吹き、夏の休みももう明日だけです。 達二は、明後日から、また自分で作った小さな草鞋をはいて、二つの谷を越えて、学校へ行くのです。 宿題もみんな済ましたし、蟹を捕ることも木炭を焼く遊びも、もうみんな厭きていました・・・ 宮沢賢治 「種山ヶ原」
・・・ 諷刺文学、朗らかで、見通しをもったプロレタリア諷刺文学をどうこしらえるかということはソヴェトでもまだ宿題だ。 いわゆるユーモア文学の作家にはゾーシチェンコなどという人もいる。これは、古いロシアと新しいソヴェト生活のむじゅんから生ず・・・ 宮本百合子 「新たなプロレタリア文学」
・・・ あっちこっちの隅で、本をよんだり、学校の宿題をやったりしている一隅で、わたしたちは長い間、ピオニェールたちと話しました。 みんなずいぶん日本にもピオニェールがあるかどうかということを知りたがってきいた。 学校はどんなか?「・・・ 宮本百合子 「従妹への手紙」
先日はどうも失礼。久しぶりでお目にかかったし、元気に働いていらっしゃる御様子だったので、私もたいへんいい心持でした。 ところで、あなたは大きい宿題をのこしていらっしゃいましたね。永年職業婦人としての経験をかさねて来てい・・・ 宮本百合子 「現実の道」
・・・明日への課題として、芸術一般が当面しているむずかしく複雑な宿題と思われる。〔一九四〇年一月〕 宮本百合子 「「建設の明暗」の印象」
・・・憲法改正は現吉田内閣の宿題の一つでした。吉田内閣がいくらかでも、民主的な要素の加わった憲法を制定して、自分達の政治の方向が民主的であるかのようにポーズすること、これは保守的な内閣にとってかくことのできない一つの仕事でした。憲法審議のための委・・・ 宮本百合子 「今度の選挙と婦人」
・・・これが新日本文学会への宿題の一つではないでしょうか。 新日本文学会の東京支部は、「東京の一日」というルポルタージュ文学を動員しました。ここへは非常に広汎な作家が参加し、一冊の本としてまとめられました。その成果についても、いずれまじめ・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・斯様なことは、最も箇人的な、最も深い人生価値批判の後に解決されることと信じ問題としては各人の宿題にしたまま、先ず進みましょう。 事実として、深い意識、真面目な期待の下に生れ出た子供等を、彼等の母親達は、随分真剣に愛しています。よく、外国・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
出典:青空文庫