・・・どこの御仁かわしゃ得知らんがあの精女の白鳩の様な足にうなされて三日三小夜まんじりともせなんだ御仁があると風奴がたよりをもて来た。叶う事なりゃ、も十年とびもどりたいと云うてじゃそうな。心あたりはないかな?第二の精霊 もうその先はやめにしよ・・・ 宮本百合子 「葦笛(一幕)」
・・・のお妙を「隣の女」のお小夜の様な凄い腕の女にされたかもしれない。 露伴先生の様な思想をもって居られたら、あの才筆とともなってどんなに立派なものが遺されたかしれないと思う。 一葉女史にしてもそう云う感じはあざむかれない。 あの「に・・・ 宮本百合子 「紅葉山人と一葉女史」
・・・そういうふうな家では、小夜という娘もそこに働いているうちはお竹どんと呼ばれるが、宮中生活のよび名で宮中に召使われているものの名であった紫式部、清少納言、赤染衛門というのも、それぞれ使われているものとしての呼名である。紫式部が藤原の何々という・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・ その日はもう夏の来るのに間のない時であったそうで気ままなその人は夏の来るのがあまりおそいと申してのう、腹立ちまぎれに薬師に申しつけて三日三小夜眠りつづける薬をつくらせてそれをのむなりまるで息をせいで深く眠りこんでしまいましたのじゃ。・・・ 宮本百合子 「胚胎(二幕四場)」
・・・同じ兼良が将軍義尚の母、すなわち義政夫人の日野富子のために書いた『小夜のねざめ』には、このことが一層明白に現われている。この書もこの後の時代に広く読まれたようであるが、その内容は人としての教養の準則を説いたものである。自然美を十分に味わうべ・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫