・・・詳しくいえば、大西洋の海面の恒久の退屈さでありアラン島民の生活の永遠の退屈さである。退屈というのが悪ければ深刻な憂鬱である。それを観客に体験させる。 始めから終わりまで繰り返さるる怒濤の実写も実に印象の強く深い見ものである。波の音もなか・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・しかし今度襲われる地方がどの地方でそれが何月何日ごろに当たるであろうということを的確に予知することは今の地震学では到底不可能であるので、そのおかげで台湾島民は烈震が来れば必ずつぶれて、つぶれれば圧死する確率のきわめて大きいような泥土の家に安・・・ 寺田寅彦 「災難雑考」
・・・それは、ひどい搾取下にある島民たちで生活されているが、見たところは、パラダイスであった。セーラーたちは、いつもその島々を、恋人のように懐しんだ。だが、その島も、船が寄港しない島に限るのであった。船がつくと、どんな島でも、資本主義にその生命を・・・ 葉山嘉樹 「労働者の居ない船」
出典:青空文庫