・・・陸軍大将の川島は回向院の濡れ仏の石壇の前に佇みながら、味かたの軍隊を検閲した。もっとも軍隊とは云うものの、味かたは保吉とも四人しかいない。それも金釦の制服を着た保吉一人を例外に、あとはことごとく紺飛白や目くら縞の筒袖を着ているのである。・・・ 芥川竜之介 「少年」
・・・家屋を越えて行くと庭に川島が呆然として居、呼んでも返事もせず。やっと心づき「お話ししなければならないことがある」と云ってやって来、叔母、季夫が圧死し、咲枝、一馬に助けられ、材木座の八百屋わきのトタン屋根の仮小屋に避難した由を云う。国男すぐ川・・・ 宮本百合子 「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」
・・・ 福沢諭吉は勿論のこと、東海散士、末広鉄腸、川島忠之助、馬場辰猪等にしろ、自身と専門的な作家、小説家の生活とを結びつけることなど夢想さえしなかったに違いない。川島忠之助は正金銀行の支配人として活躍したし、東海散士、柴四朗は農商務次官、代・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
出典:青空文庫