・・・何しろ、その時分は、あの女もたった一人のおふくろに死別れた後で、それこそ日々の暮しにも差支えるような身の上でございましたから、そう云う願をかけたのも、満更無理はございません。「死んだおふくろと申すのは、もと白朱社の巫子で、一しきりは大そ・・・ 芥川竜之介 「運」
・・・極度の近視眼は結婚のほうにも差支えるか。」「まさか。」三浦君は苦笑して、次のような羨やむべき艶聞を語った。艶聞というものは、語るほうは楽しそうだが、聞くほうは、それほど楽しくないものである。私も我慢して聞いたのだから、読者も、しばらく我・・・ 太宰治 「律子と貞子」
・・・僕がいないと、銀行で差支えるのですが、どうにかして貰えないことはなかろうと思います。」実はこれ程容易な事はない。自分がいなくても好いことは、自分が一番好く知っているのである。「宜しい。それじゃあ、明日邸へ来てくれ給え。何もかも話して聞せ・・・ 著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外 「世界漫遊」
・・・これは諷刺の意を誤解せられては差支えるので、故意に原文に従わなかったのである。誤訳ではない。 著:ディモフオシップ 訳:森鴎外 「襟」
出典:青空文庫