・・・各国家民族が自己を越えて一つの世界を構成すると云うことは、ウィルソン国際連盟に於ての如く、単に各民族を平等に、その独立を認めるという如き所謂民族自決主義ではない。そういう世界は、十八世紀的な抽象的世界理念に過ぎない。かかる理念によって現実の・・・ 西田幾多郎 「世界新秩序の原理」
・・・左れば此旧女大学の評論、新女大学の新論は、字々皆日本婦人の為めにするものにして、之を百千年来の蟄状鬱憂に救い、彼等をして自尊自重以て社会の平等線に立たしめんとするの微意にして、啻に女性の利益のみに非ず、共に男子の身を利し家を利し子孫を利し、・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・故に今、婦人の地位を低しというも、男子の地位を引下げて併行するに至らしむれば、男女の権力平等なりというべし。あるいは婦人は今のままにして、男子の地位をして一層の下に就かしむれば、女権特に高しというべし。これ即ち我輩が独り男子を目的にして論鋒・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・ 明治はじめの自由民権が叫ばれて、婦人がどしどし男子と等しい教育をうけ、政治演説もし、男女平等をあたり前のことと考えた頃、日本では、木村曙「婦女の鑑」、若松賤子「忘れ形見」などの作品が現れた。若い婦人としてよりよい社会を希望するこころも・・・ 宮本百合子 「明日咲く花」
・・・今度改正された憲法は、その中に、すべての人民は法律の前に平等であるとされていて、性別身分などの特権によって特別な利益を保護されることはないように規定されている。しかしその中に天皇という特別な一項がある。華族は世襲でなくなったが、天皇の地位は・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・明治維新の誰でも知っているこういう特質は、「四民平等」となって、ふるい士農工商の身分制を一応とりさったようでも、数百年にわたった「身分」の痕跡は、人民生活のなかに強くのこりつづけた。明治文学の中期、樋口一葉や紅葉その他の作品に、「もとは、れ・・・ 宮本百合子 「新しいアカデミアを」
・・・軈て自由と平等とはその名の如く美しく咲くであろう。その尽きざる快楽の欣求を秘めた肺腑を持って咲くであろう。四騎手は血に濡れた武器を隠して笑うであろう。しかし我々は、彼らの手からその武器を奪う大いなる酒神の姿を何処で見たか。再び、彼らはその平・・・ 横光利一 「黙示のページ」
・・・ 人間は神の前において平等である。しかしある人は他の人よりも多くの稟賦を恵まれ、そのより多くの力をもって指導者の位置につくことができる。あるいは、つかねばならぬ。生来の芸術家はこの種の人である。いかに平民主義が栄えても、天与の才に対する・・・ 和辻哲郎 「世界の変革と芸術」
・・・作者は作中の人物を平等に愛するのではなく、一を愛し他を憎むのであるが、そういう愛憎の卒直な表現からでも、我々は優れた作品を期待することができる。 しかし藤村の個性はそうでない態度の上に立っているのである。だから藤村の作品からその個性にな・・・ 和辻哲郎 「藤村の個性」
・・・親の愛は平等であるべきだ。もしそれを二、三にするくらいならむしろ平等に愛しない方がいい。この事は不断に厳密な自己省察を必要とするのであるが、先生はこの点について非常に注意を払っていた。そうしてこの心がけがやがて人生全体に対して公平無私であろ・・・ 和辻哲郎 「夏目先生の追憶」
出典:青空文庫