・・・この霊屋の下に、翌年の冬になって、護国山妙解寺が建立せられて、江戸品川東海寺から沢庵和尚の同門の啓室和尚が来て住持になり、それが寺内の臨流庵に隠居してから、忠利の二男で出家していた宗玄が、天岸和尚と号して跡つぎになるのである。忠利の法号は妙・・・ 森鴎外 「阿部一族」
・・・そうして見ると、人間の智識、学問はさて置き、宗教でもなんでも、その根本を調べて見ると、事実として証拠立てられない或る物を建立している。即ちかのようにが土台に横わっているのだね。」「まあ一寸待ってくれ給え。君は僕の事を饒舌る饒舌ると云うが・・・ 森鴎外 「かのように」
・・・真に自分の個性の建立に努むる途上においてならば、いかなる事が起ろうとも自分は悔いない。 自分は自分の力に許されている以上のことを望んでいる。しかし自分は自分以外のものになろうとしているのではない。また自分を改良し訂正しようとしているので・・・ 和辻哲郎 「自己の肯定と否定と」
出典:青空文庫