・・・すると子供からよく質問を受けて弱るのです。もっとも滑稽物や何かで帽子を飛ばして町内中逐かけて行くと云ったような仕草は、ただそのままのおかしみで子供だって見ていさえすれば分りますから質問の出る訳もありませんが、人情物、芝居がかった続き物になる・・・ 夏目漱石 「中味と形式」
・・・少しましになってからYが 弱るから何かおあがり、何か食べたいものをお考え と日に何度となく云って呉れた。 食べたいものはあるんだけれど、駄目。 何さ、云うだけ云って御覧。そこで私はつみ重ねた白い枕の上で 云うに云われぬ 一種の笑顔に・・・ 宮本百合子 「一九二九年一月――二月」
・・・ある友達が私のしびれている脚に電気療法をしながら、その男兄弟が、「どうもこの頃は弱るよ。転向なんぞした奴だからというのを口実に、執筆をことわる人間ができて来て……」といって述懐したという話をした。そのときも、私はさまざまな意味で動的・・・ 宮本百合子 「冬を越す蕾」
出典:青空文庫