・・・しかし人間の強欲をもってするも地は永久に殺すことのできるものではありません。神と天然とが示すある適当の方法をもってしますれば、この最悪の状態においてある土地をも元始の沃饒に返すことができます。まことに詩人シラーのいいしがごとく、天然には永久・・・ 内村鑑三 「デンマルク国の話」
・・・だいたい、このろくろ首いうもんは、苦界に沈められている女から始まったことで、なんせ昔は雇主が強欲で、ろくろく女子に物を食べさしよれへん。虐待しよった。そこで女子は栄養がとれんで困る。そこへもって来て、勤めがえらい。蒼い顔して痩せおとろえてふ・・・ 織田作之助 「秋深き」
・・・はデパートに勤めているが、父親が強慾でしばしば芸者にされようとしていた。その目で見たせいか、彼女の痩形の、そして右肩下りの、線の崩れたようなからだつきは何かいろっぽく思えたが、しかし、やや分厚い柔かそうな下唇や、その唇の真中にちょっぴり下手・・・ 織田作之助 「大阪発見」
・・・しかし、あの怪力、あの大食い、あの強慾。 あたたかになり、さまざまの花が咲きはじめたが、田島ひとりは、頗る憂鬱。あの大失敗の夜から、四、五日経ち、眼鏡も新調し、頬のはれも引いてから、彼は、とにかくキヌ子のアパートに電話をかけた。ひとつ、・・・ 太宰治 「グッド・バイ」
・・・ 作者が二十章のところで、木村の一つの経験として僅か数行で説明しているA村の地主二人が二大政党に分れて対立し、それにつれてA村の村民も二派にわかれていること、※とその強慾な番頭下山、地主の変るごとに戦々きょうきょうたるA村の小作たち・・・ 宮本百合子 「作家への課題」
・・・ こんなことが強慾な資本主義の世の中にあるだろうか? ここにいわれている誠意とは一体どういうものだろうか? こういう誠意が結局ブルジョアにとって都合のいいものであることは知れている。 この例でわかるように、ブルジョア新聞・・・ 宮本百合子 「「市の無料産院」と「身の上相談」」
出典:青空文庫