・・・唯この文字に由て離縁の当否を断ず可らず。民法の親族編など参考にして説を定む可し。 右第一より七に至るまで種々の文句はあれども、詰る処婦人の権力を取縮めて運動を不自由にし、男子をして随意に妻を去るの余地を得せしめたるものと言うの外なし。然・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・その罰の当否はしばらく擱き、とにかくに日本国において、学者と名づくる人物が獄屋に入りたるという事柄は、決して美談に非ず。窃盗博徒といえども、これを捕縛してもらさざるは、法律上において称すべき事なれども、その囚徒が獄内に充満するは、祝すべきに・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・その評の当否は簡単には云えないけれども、もしそういう傾向が見られたとして、それはその頃の一般の生活意欲がどんなに創造的なものを求め、それをうち立てて行こうとする熱意に満ちていたかという事実を如実に語っているのだと思われる。生活そのものに生新・・・ 宮本百合子 「地の塩文学の塩」
・・・小市民階級の娘たちが、うちが面白くないので、飛び出して、例えば映画女優になりたいとか、ダンサーを志すとか、いうことは屡々あり、そこには客観的に見た当否は別とし、自身の才能についてのぼんやりした選択が認められる場合が多い。よほど質の低い、地方・・・ 宮本百合子 「花のたより」
・・・そのことの当否についてレーニンは度々信頼に充ち、而も正確な判断にゴーリキイを立ち戻らせるための手紙を送っている。 世界を震撼させた「十月」がやがて来た。 ゴーリキイは、当時自分の主宰していた『新生活』紙上で、この新しい人類の世紀の正・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」
・・・さてわずかに二三日を隔てて弥一右衛門は立派に切腹したが、事の当否は措いて、一旦受けた侮辱は容易に消えがたく、誰も弥一右衛門を褒めるものがない。上では弥一右衛門の遺骸を霊屋のかたわらに葬ることを許したのであるから、跡目相続の上にも強いて境界を・・・ 森鴎外 「阿部一族」
出典:青空文庫