・・・ やがて食事当番の子供が二人がかりで大きいお鍋を運んで来て、角テーブルの上へおきました。ポーポー湯気がたって、美味そうな匂いがする。スープです。 別の当番の子供たちが、それを順ぐりにアルミの鉢に入れてくばる。 そこへ、「子供・・・ 宮本百合子 「従妹への手紙」
・・・お千代ちゃんが当番で、二人並び東片町の大通りを来ると、冬など、もう街燈が灯っていることもあった。 * 由子とお千代ちゃんは歌をうたった。 阿蘇の山里秋更けて 眺め淋しき冬まぐれ ・・・ 宮本百合子 「毛の指環」
・・・――組の当番が出来て、たとえば食事前手を洗う。それを本当にチャンと洗ったか洗わないか、姆母さんだけが一人一人つらまえて「さあ見せて御覧なさい」とばかりは云わない。「さあ、子供たち、手を洗って御飯ですよ!」 ドッと手洗場へ、めいめいの・・・ 宮本百合子 「砂遊場からの同志」
・・・教員室と裁縫室の窓はこの運動場に面していて、当番のとき水のみ場のわきにある小さい池の掃除を、いいこころもちで高い声で唱歌をうたいながらしていると、先生の顔が上の窓から覗くことがあった。覗かれると、どうかしてもう歌はとまってしまうのだった。・・・ 宮本百合子 「藤棚」
・・・たとい当番たりとも在宿して火の用心を怠らぬようにいたせというのが一つ。討手でないのに、阿部が屋敷に入り込んで手出しをすることは厳禁であるが、落人は勝手に討ち取れというのが二つであった。 阿部一族は討手の向う日をその前日に聞き知って、まず・・・ 森鴎外 「阿部一族」
・・・次に臂をずっと底までさし入れて、短刀を一本取り出した。当番の夜父三右衛門が持っていた脇差である。りよは二品を手早く袱紗に包んで持って出た。 文吉は敵を掴まえた顛末を、途中でりよに話しながら、護持院原へ来た。 りよは九郎右衛門に挨・・・ 森鴎外 「護持院原の敵討」
出典:青空文庫