・・・その蕃人征伐に使われたのも兵士たちだ。 兵士たちは、こういう植民地の労働者を殺戮するために使われ、植民地を帝国主義ブルジョアジーに最も都合がいいように確保するために使われ、その結果はどうなるか? その結果は、帝国主義ブルジョアジーが・・・ 黒島伝治 「入営する青年たちは何をなすべきか」
・・・りで済むことでは無い、という思が直に※深く考え居りてか、差当りて何と為ん様子も無きに、右膳は愈々勝に乗り、「故管領殿河内の御陣にて、表裏異心のともがらの奸計に陥入り、俄に寄する数万の敵、味方は総州征伐のためのみの出先の小勢、ほかに援兵無・・・ 幸田露伴 「雪たたき」
・・・次郎兵衛は夜、酒を呑んでのかえりみち必ずひとつの水車を征伐した。廻りめぐっている水車の十六枚の板の舌を、順々にぽかりぽかりと殴るのである。はじめは見当がむずかしくてなかなかうまく行かなかったのであるが、しだいに三島のまちで破れた舌をだらりと・・・ 太宰治 「ロマネスク」
・・・「平和化」で、先ず「平定」とでも訳する所であろうが、とにかくフランス人らしい巧妙な措辞である。「誅戮」「討伐」「征伐」「征討」などと、武張ったどこかの国のジャーナリストなら書きたい所であろう。それを「平和化」と云ったところはやはりフランス人・・・ 寺田寅彦 「雑記帳より(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・また、桃太郎が生まれなかったらそのかわりに栗から生まれた栗太郎が団子の代わりにあんパンかキャラメルを持って猫やカンガルーを連れてやはり鬼が島は征伐しないでおかないであろう。いくらそんな不都合なことはいけないと言っても、どうしてもだれか征伐に・・・ 寺田寅彦 「さるかに合戦と桃太郎」
・・・それにもかかわらずこういう口碑は人の心を三韓征伐の昔に誘う。そして現代の事相に古い民俗的の背景を与える。 この神社の祭礼の儀式が珍しいものであった。子供の時分に一二度見ただけだから、もう大部分は忘れてしまったが、夢のような記憶の中を捜す・・・ 寺田寅彦 「田園雑感」
・・・小田原ではバスが待っていたが、箱根町行は満員なので空席のあった小涌谷行に乗込んだ。湯本までの道路は立派なドライヴウェーである。小田原征伐当時の秀吉に見せてやりたかったという気もした。塔の沢あたりからはぽつぽつ桜が見え出した。山桜もあるが、東・・・ 寺田寅彦 「箱根熱海バス紀行」
・・・ 一九二九年の、激しい農村の階級闘争、富農征伐のとき、どちらかというと、右翼的誤謬をもち易い農民作家団の中に「工業化主義者の職場」という、左翼的スローガンをかかげた一団が現われた。 一見このグループの立場は進歩的であり、発展の線に沿・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ ソヴェト同盟をのぞく世界じゅうのプロレタリア大衆は、めいめい本国、植民地の職場で、賃銀引下げ、労働強化に反対し、ストライキし、ダラ幹征伐を行わなければならないでいる。それだのに、その小説で職場の革命的反対派を描かないようなダラ幹派プロ・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・島原征伐がこの年から三年前寛永十五年の春平定してからのち、江戸の邸に添地を賜わったり、鷹狩の鶴を下されたり、ふだん慇懃を尽くしていた将軍家のことであるから、このたびの大病を聞いて、先例の許す限りの慰問をさせたのも尤もである。 将軍家がこ・・・ 森鴎外 「阿部一族」
出典:青空文庫