・・・生産技術の面でのこういう後進者としての自覚は、ソヴェト市民に「追いつけ、追いこせ」の二十五年間を可能にした。同時にまた、文化の面では、アンナ・アフマートヴァのフランス香水の残り香のする老いた桃色と紫色との詩にちょっと魅せられるような気分をも・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・これが、ロダンの芸術を益々ふかく理解させるばかりか、後進のものに彫刻のみならず、芸術というものの本質をわからせるに役立ち、文学や音楽の仕事にたずさわるものをも魅する珠玉に輝いているのは何故だろう。ロダンはそこで、自分の苦心努力ぶりを語っては・・・ 宮本百合子 「「青眉抄」について」
・・・日本において民主化の諸問題が歪むのには、すこぶる深刻な後進的、半封建的条件が作用しているわけですが、それがまたある場合には外部的な力と結合されて、いっそう複雑になって来ました。ほかの国に資本主義が存在している以上、たとえ民主主義の確立してい・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・日本の国際感覚には、後進国らしくそして封建くさく、仲間入りさせて貰える、仲間入りするようになった、という要素が案外につよい。対等につき合うことは既定の事実で、それからさき、どうつき合うかが問題であるヨーロッパの国際性とはちがった気分が流れて・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・ 日本型の文化躍進の特徴は、日本の社会が明治以来不具のまま置かれて来た社会機構全般の後進性に伴っていて、奥ゆきなく、反射的で、真の意味で自立した人間の文化としての伝統を摂取し、それを生かしてゆく強靭な理性の弾機をもち得ないで来ている。皮・・・ 宮本百合子 「「どう考えるか」に就て」
・・・ところが、醜として撮影された部分が人生の情景として、感情をもって見れば常に必しも醜ではなく、首都の美観の標本として示されたものの中には、却って東洋における後進資本主義の凡庸なオフィスビルディングの羅列のみしかないのもあった。都市の美醜、人生・・・ 宮本百合子 「日本の秋色」
・・・ きょうに予感されるこの推移と変革の過程では、一九四五年八月からのち、日本の文学評論の上に活溌に云われはじめた「後進日本」の知性を制約している社会条件の解剖さえも、「既存の通念」の一つと化しはじめている。なぜなら、わたしたちは、「おくれ・・・ 宮本百合子 「人間性・政治・文学(1)」
・・・四肢の自由を失って後病床に釘づけにされていながら、彼は後進者の教育の仕事を引受けて研究会の指導などをした。このような状態の時オストロフスキーは更に一つの打撃に堪えなければならなかった。それは両眼の失明である。オストロフスキーは自身によって書・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
・・・だから、中国に対する日本の後進国帝国主義の侵略の結果は、その潮のさしひきの間に三国干渉というような微妙な表現で、当時の各列強間に中国の部分的植民地化のきっかけをもたらした。日露戦争のとき、旅順口の攻撃は主として英国の海軍によって行われたもの・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・小さいおくれた日本にも四世紀を経たヨーロッパの歴史の波が、おのれの歴史的現実として存在している。後進資本主義国であり、天然資源の貧寒な条件におかれているだけ、一方に世界の帝国主義的な段階の特質をつよくあらわして来た。そうでなかったら、日本が・・・ 宮本百合子 「真夏の夜の夢」
出典:青空文庫