・・・ 主人は顔を下に向けゆっくりと毛筆を運びながら、応答している。「やっぱり、外であがるようには行きませんでしてね」「そうでしょうねエ」 感慨をこめて答えているが、その若い女のひとには、どんな風にそれが外で食べるようには行かない・・・ 宮本百合子 「日記」
・・・そして、中央執行委員会の中の、質問応答掛で働き出した。 革命とともに数百万の女が、ソヴェト同盟の新社会の礎を据えるために男と並んで働きだした。八時間労働。同一労働に対しては男女同賃銀。婦人の活溌な社会労働は、完全な母性、幼児保護の設備な・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・革命の意味と、プロレタリアートの動かすべからざる革命的任務とを十分理解しているとはいえない批評や、提案や、依頼に対して、レーニンがある時は沈思し、ある時はまだるこそうに皮肉に、ある時は悲しげに同情的に応答した様子は、尽きぬ興味を与える記録の・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
・・・経験のある人々は、哨兵に呼び止められた時の応答のしぶりを説明する。徒歩で行かなければならない各区への順路を教える。何にしても、夜歩くのは危険極ると云うのに、列車は延着する一方で、東京を目前に見ながら日が暮てしまったので、皆の心配は、種々な形・・・ 宮本百合子 「私の覚え書」
・・・そして先年尊氏が石浜へ追い詰められたとも言い、また今日は早く鎌倉へこれら二人が向ッて行くと言うので見ると、二人とも間違いなく新田義興の隊の者だろう。応答の内にはいずれも武者気質の凜々しいところが見えていたが、比べ合わせて見るとどうしても若い・・・ 山田美妙 「武蔵野」
・・・栖方を狂人と見るには、まだ栖方の応答のどこ一つにも狂いはなかった。「君の数学は独創ばかりのような感じがするが、君は零の観念をどんな風に思うんです。君の数学では。僕は零が肝心だと思うんだが、どうですか。」「そこですよ。」栖方はひどく乗・・・ 横光利一 「微笑」
出典:青空文庫