・・・そうに思わるれど、ここの主人に一つの癖あり、とかく塩浜に手を出したがり餅でもうけた金を塩の方で失くすという始末、俳諧の一つもやる風流気はありながら店にすわっていて塩焼く烟の見ゆるだけにすぐもうけの方に思い付くとはよくよくの事と親類縁者も今で・・・ 国木田独歩 「置土産」
・・・自ら欺けるをかれはいつしか知りたれど、すでに一度自ら欺きし人はいかにこれを思い付くともかいなく、かえってこれを自ら誇らんとするが人の情の怪しき作用の一つなり。そこには必ず一個の言いわけあるものなり。この青年はわれに天職ありと自ら約せり。この・・・ 国木田独歩 「わかれ」
・・・そんな訳であるから、この一篇は畢竟思い付くままの随筆であって、もとより論文でもなく、考証ものでもなく、むしろ一種の読後感のようなものに過ぎない。この点あらかじめ読者の諒解を得ておかなければならないのである。 西鶴の人についてもあまりに何・・・ 寺田寅彦 「西鶴と科学」
・・・以上はただ全くの素人の想い出話のついでに思い付くままの空想を臆面もなく書付けて見ただけである。 寺田寅彦 「鴫突き」
出典:青空文庫