・・・或いは外地の悪質の性病に犯されたせいかも知れない。気の毒とも可哀想とも悲惨とも、何とも言いようのないつらい気持で、彼の痴語を聞きながら、私は何度も眼蓋の熱くなるのを意識した。「わかりました。」 私は、ただそう言った。 彼は、はじ・・・ 太宰治 「女神」
・・・ 公私逆立った既成政党の腐敗が、忽ち、婦人参政の新しい地域まで悪質な性病のような急スピードで蔓延しつつある。戦争犯罪によって頭株をとられた進歩党が、築地の待合に共産党をのぞく各派の主だつ婦人たちをよんで、出席した者に、進歩党内の重要なポ・・・ 宮本百合子 「逆立ちの公・私」
・・・社会から自分を守るものだと思っていた明治や大正の日本の娘たちは、今日若い婦人たちのほとんどすべてがさまざまの経済的事情から職業を持ち、あの混む電車に乗り、さらにあまりりっぱな服装をしていない若い女性は性病撲滅のためという理由によって、警察に・・・ 宮本百合子 「自覚について」
・・・生年月日 職業 過去の健康状態 父母と弟妹の健康状態――祖父さんに性病はありませんでしたか 生物遺伝子は三代目のモルモットに最も興味がある。――然し自分は祖父の顔さえ覚えて居ない。私は手をひろげて云った。――この答えはむずかしい・・・ 宮本百合子 「一九二九年一月――二月」
・・・中には、赤ん坊にどう云う風にして湯をつかわせるか、台所の油虫はどんな薬で退治るかを教える映画や、性病予防の宣伝フィルムなどもあって、それを見ているうちに、ごく日常的であるが大切な衛生思想を覚え込むと云う場合が多くある。反宗教運動のために、労・・・ 宮本百合子 「ソヴェト同盟の芝居・キネマ・ラジオ」
・・・それから性病患者も勿論あって、そういうものに対して優生学から子供を、次の時代を改善して行くということは非常に熱心にやっている。成人、大人になった人間の健康状態を良くするという点、それから子供を出来るだけ丈夫に育てること、それには林間学校を拵・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・労働者のクラブには衛生陳列室があって、性病とその遺伝の害悪を模型や図解で示し、肺病、癲癇、アルコール中毒等についても若者たちの具体的、日常的要心を喚起している。 竹内茂代女史は、日本女子の体格分類統計をもって医学博士になられた。彼女の博・・・ 宮本百合子 「花のたより」
・・・「ここからは、病気のある――軽い性病のある母親の棟です」 分娩室は今空だ。隅に大きい照明燈があっち向に立ってる。「母親の病室は同じですが……われわれは赤坊に深い注意を払っています」 赤坊室で、自分は強い印象をうけた。 ソ・・・ 宮本百合子 「モスクワ日記から」
出典:青空文庫