・・・見れば、世界のありようとして、私たち誰もの生活に波瀾は避けがたく、もし現代の若い女性がスポーツの精神を理解すると云うならば、人生におけるフェア・プレイの美と、善戦とはいかなるものかという、それら交々の悲喜や勇気などこそ、多くのものを語ってい・・・ 宮本百合子 「フェア・プレイの悲喜」
・・・明暗をひっくるめてその関係の生きて動きつつあるそのものを、よりひろいより大きい時間と空間との中に再現したとき、人間は常に進歩を欲しているものだがまた常にそれは矛盾におかれている、その生々しい人間真実の悲喜をうつしたとき、文学精神の明るさも、・・・ 宮本百合子 「文学は常に具体的」
・・・これまでの純文学が一個人内面的経緯を孤立的に追求して来たのに対して、新たな文学は、この社会に一定の関係をもって生活し歴史とかかわりあっている人間群の悲喜をその文学の内容としようとした。そして、その作品にあらわれる主人公たちがそれぞれ多数のも・・・ 宮本百合子 「平坦ならぬ道」
・・・生活がその曲折と悲喜交々の折衝によって、われわれに文学への欲求を起させるのであるし、様々な作品をもつくらせる。成程文学作品が我々の生活に影響する力は非常に大きいが、それは或る一つの文学作品が現実への迫真力の深さによって再び現実の生活を突き動・・・ 宮本百合子 「見落されている急所」
・・・ 小学校を出たばかりの少年や少女たちは、この一二年の間に夥しい数でひろく荒い生産の場面に身と心とをさらしはじめているのだが、日本の明日の文学はこれらの稚く若々しい肉体と精神の成長のためのたたかいとその悲喜とを、どのように愛惜し誠意を披瀝して・・・ 宮本百合子 「若き精神の成長を描く文学」
出典:青空文庫