・・・ 転向の原因、勢力消長の決定因子が徹底的に分らない限り、一時間後の予報は出来ても一昼夜後の情勢を的確に予報することは実は甚だ困難な状況にあるのである。 これらの根本的決定因子を知るには一体どこを捜せばよいかというと、それはおそらく颱・・・ 寺田寅彦 「颱風雑俎」
・・・こっちの情勢を高島に報告するのであるが、三吉は三吉で、もう今夜の演説会で、「新人会熊本支部」もおしまいだ、などと考えているのだった。「だから、労働者グループは、いまじゃ青井君一人ぽっちですよ」 下宿の二階にあがると、古藤にかわって福・・・ 徳永直 「白い道」
・・・その由って来るところを尋ねる時、少年のころ親しく見聞した社会一般の情勢を回顧しなければならない。即ち明治十年から二十二、三年に至る間の世のありさまである。この時代にあって、社会の上層に立っていたものは官吏である。官吏の中その勲功を誇っていた・・・ 永井荷風 「西瓜」
・・・今日の世界状勢は世界が何処までも一とならざるべからざるが故に、各国家が何処までも各自に国家主義的たらねばならぬのである。而してかかる多と一との媒介として、共栄圏という如き特殊的世界が要求せられるのである。 我国民の思想指導及び学問教・・・ 西田幾多郎 「世界新秩序の原理」
・・・ 短い月日の間に、はげしく推移する情勢に応じて書かれた一九三三年ごろの諸評論には、いそいで刻下に必要な階級文化のための土台ごしらえを堅めようとする著者のたたかいの気迫がみなぎっている。そのたたかいの気迫、抵抗の猛勇な精神は、その情勢の中・・・ 宮本百合子 「巖の花」
・・・ 昨今のように、一般の社会状勢が息苦しく切迫し、階級対立が最も陰性な形で激化しているような時期に、鬱屈させられている日常生活のせめてもの明るい窓として、溌剌として、新しい恋愛がどことなし人々の心に翹望されていることは感じられる。しかも、・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・において作者が念頭に置かない一般の情勢であったこと、それらが私たちの心をまじめな感想にひきこむのである。 種々のゆがみをもちつつ、献身的な努力でともかく今日まで押しすすめられて来た運動の段階にあって、私たちは大きい成果の上に生きていると・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・さき頃の映画の東宝問題というものがでると、誰にもファシズムの反動文化政策というものが分るし、まして、この頃のような社会情勢に対してファシズムの圧力を感じ、それに対して反対の声をあげない人はありません。三鷹事件、下山事件の新聞記事の扱いかたな・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・一九四五年の八月が来て、二年三年とたって、こんにちの情勢の下で自分が二十年前にかいたソヴェト紹介をよみかえして見ると、嘗ての暗黒の時に感じた神経的な反撥は一つも感じられない。その時代の理解の素直さが、自然にうけとれる。明るさがうそでないこと・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第九巻)」
・・・その情勢が、ドイツ・フランス等の大衆を団結させ、左翼の組織は拡大した。孫文派が広東政府を樹立し、中国国民党宣言を発表した。京漢鉄道総工会の成立大会を武力解散させた軍閥呉佩孚に対して中国労働者がジェネストを起し、英国の労働運動に一つのエポック・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」
出典:青空文庫