・・・けれども、それが、幾年も幾年も継続する種々な重い慢性病の一つだったら如何でしょう。 これは、私自身の周囲を一目見ても判断はつきます。月々の月給を、適当に支給する丈の資力はあり、全くの必要からでその人の助を期待している家庭では、心こそ同情・・・ 宮本百合子 「ひしがれた女性と語る」
・・・ 十七年危篤に陥ったとき腎臓をいためていたまま戦時中手当ができず、その後の活動によって慢性の難治な状態になっています。十二月から三月ごろまで尿毒症の危険があり、視力喪失の危険もあったので様々の治療を試みています。また医者も通院を禁止し・・・ 宮本百合子 「文学について」
・・・ 友松は、東北地方の飢饉が今年にはじまったことでないということについて、その地方における地主と小作との関係の中に原因をつきとめず「彼らは恵まれた自然に慢性になっているらしい。ここに私達がまじめに考えなくてはならぬ点があると思う」と、東北・・・ 宮本百合子 「村からの娘」
・・・りぎり七時まで、彼女が両腕にものを抱えて歩道へ飛び出した扉の奥、三階の73という室で何をしていたかと云えば、日本女は床へころがした行李の前へ膝をつきながら正体の知れない白い粉にむせてくさめをしていた。慢性的にとり散らされた室の中ではタイプラ・・・ 宮本百合子 「モスクワの辻馬車」
出典:青空文庫