・・・みんな優しい。みんな手助けして呉れる。冷く、むごいのは、あなたたちだけだ。どん底に蹴落すのは、あなたたちだ。負けても、嘘ついて気取っている男だけが、ひとのせっかくの努力を、せせら笑って蹴落すのだ。あなたは、いけない。あなたは、これから、さち・・・ 太宰治 「火の鳥」
・・・とも有名でないし、そうしていつも貧乏で、からだ工合が悪いと言って寝たり起きたり、そのくせ口だけは達者で、何だかんだとうるさく私たちに口こごとを言い、そうしてただ口で言うばかりでご自分はちっとも家の事に手助けしてくれないので、お嫂さんは男の力・・・ 太宰治 「雪の夜の話」
・・・もしもこの生徒が入学中に十露盤の稽古したることならば、その初歩に廃学するも、雑用帳の〆揚げぐらいは出来て、親の手助けにもなるべきはずなるに、虎の画を学んで猫とも犬とも分らぬもののできたるさまなり。つまり猫ならばはじめから猫を学ぶの便利にしか・・・ 福沢諭吉 「小学教育の事」
・・・見物は、だらしなく、ワアハハハと笑うきりで手助けはしないし、火より先にけんかをやめさせる必要がある。勇吉夫婦は、ところが、名うての豪の者ではないか! 勘助は、馬さんと大手おけに水をくんでゆくと、いきなり、ざぶりと、燃える障子にぶちまけた・・・ 宮本百合子 「田舎風なヒューモレスク」
・・・ 初めは、奪う愛は誤っている、与える愛でなければならないと細君の教育や家政への手助けや大いに努めるが、やがて「それでは男の精神が寂しい。行動では我ままをしてもいいのだ。奪われる愛というものも、特に女にとっては在っていいのだ」というところ・・・ 宮本百合子 「「結婚の生態」」
・・・ │ └─────────────────┘ 都会の工場から農村の集団農場の手助けに労働者のウダールニクが数十万動員された。 富農撲滅と富農と結托する僧侶排撃の精力的な活動と集団農場での文化向上のための文化・芸術・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・海外との交通の手助けなどもしている。そう眼界の狭い学者であったとは思えない。彼の著として伝わっている『仮名性理』あるいは『千代もと草』は、平易に儒教道徳を説いたものであるが、しかし実は、彼の著書であるかどうか不明のものである。同じ書は『心学・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫