・・・彼等の手筈はこうであった。二三人は昼間見ておいた西瓜をひっ抱えてすぐ逃げる。他のものは態と太十を起して蚊帳の釣手を切って後から逃げるというのであった。太十は其夜喚んでも容易に返辞がなかった。それ故そういう悪戯さえしなかったならば翌日ただ太十・・・ 長塚節 「太十と其犬」
・・・を聞くことが出来て、今日はどうぞこの包みが間に合うように、と願いながら緑茶を小さいカンにつめたり、かつお節をけずったり、紀さんに頼んで夜光磁石や、天文図やウィスキーの瓶詰などを陸軍の方から買ってもらう手筈をしたりしています、その前に南方では・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・が、その手筈を決める決心はつかないらしかった。なほ子は、祖父の癌であったことからそれを気にしているのであったが、まさ子は、そんな疑いを頭に置かないし、置いているとしても彼女は第一医者に信用を置いていなかった。十三年ばかり前、癌だと云われ、切・・・ 宮本百合子 「白い蚊帳」
・・・ 私は受け身に、きめられた手筈にしたがって永い道を車にのって行った。 二階のお座敷に、平たくて大きいテーブルがあったように覚えている。床の間には大きい支那の石刷がかかっていたと思う。そこへ、どちらかというと速くて軽い跫音が階子をのぼ・・・ 宮本百合子 「坪内先生について」
・・・医者がとても家には危くて置けないから病院へ入れろと云うが、普通に云って聞くことでないから、立前を口実にこちらへ寄来す手筈をしてこちらから無理やりにでも病院へ連れ込むというのであった。「飛んだことになって、まことに御迷惑でしょうが、職人衆・・・ 宮本百合子 「牡丹」
・・・ 僅か七八人の小さい集りとして発足してから半年ほど経った今日は、全国に数百人のクラブ員ができ、婦人民主新聞が発刊される手筈になったし、秋からクラブと特別な関係をもつ雑誌も発行されるようになった。そして、私たちがまだ未熟で、クラブとしての・・・ 宮本百合子 「三つの民主主義」
出典:青空文庫