・・・鞭はりゅうりゅうと風を切って、所嫌わず雨のように、馬の皮肉を打ち破るのです。馬は、――畜生になった父母は、苦しそうに身を悶えて、眼には血の涙を浮べたまま、見てもいられない程嘶き立てました。「どうだ。まだその方は白状しないか」 閻魔大・・・ 芥川竜之介 「杜子春」
・・・の四字を冠しただけで満足しているような文壇社会党乃至文壇共産党の文学も、文壇進歩党の既成スタイルを打ち破るだけの新しいスタイルを生み出す努力をしなければ、いいかえれば作品の上で文壇進歩党に帽子を脱がすほどの新しさを生み出さねば、結局は文学運・・・ 織田作之助 「土足のままの文学」
・・・王の奸佞邪智を打ち破る為に走るのだ。走らなければならぬ。そうして、私は殺される。若い時から名誉を守れ。さらば、ふるさと。若いメロスは、つらかった。幾度か、立ちどまりそうになった。えい、えいと大声挙げて自身を叱りながら走った。村を出て、野を横・・・ 太宰治 「走れメロス」
・・・そうしてひとりでにできたこの壁を打ち破るという事ができるとしても、その努力は今の健康が許さないと思っていた。そう思ってむしろ安心しているそばで、またこうしてはならないという不安の念が絶えず襲いかかって来た。利己的であると同時に気の弱い彼は、・・・ 寺田寅彦 「球根」
・・・しかし、彼は当時の自分の力では打ち破ることの出来なかった周囲のごまかし、小市民の毒によって、少なからず制約されている。自分で知らずに、鋭い心の目覚めを遅らされた。この興味ある一例は一八八一年三月一日に、農奴解放を行って後全く反動化したアレキ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・どういう可能性があり、どういう障碍物があり、どんな方法でそれを打ち破ることが出来るかを研究しあう会だと思う。一つのきまりきった型をして、みなさんこれにならえという風な役所的な会議である筈がない。役所風のいわゆる文化政策に対して、私たちは生き・・・ 宮本百合子 「明瞭で誠実な情熱」
・・・ ヨーロッパで、自然主義の持った役割は非常に大きく、過去のヨーロッパ文化がその宗教的な伝統、騎士道の遺風、植民地政策の結果から生じた女性尊重と精神的愛の誇張から生まれている男女の性生活の偽善を打ち破る力があった。文芸思潮として日本へ入っ・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
・・・終了後の大正年代に、新婦人協会など同じ目的のためにさまざまに努力したけれども、今回第二次世界大戦敗北による、ポツダム宣言によって治安維持法を初め沢山の悪法が撤廃される時まで、婦人独自の力で、この悪法を打破ることは遂に出来なかった。日本では、・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫