・・・ 凡そ一年も出してもらえたらと栄蔵は云ったけれ共病気の性をよくしって居る主婦は、とうていそれだけの間になおらない事を知って居たし、沢山の子供の学費、食客の扶助などで、中々入るから熟考した上での返事がいいと思って、又明日来てくれれば返事を・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
・・・月給で自分が食べたり、家庭を扶助したりしている女はとかくうるさい、月給なんかなしでも何か仕事をしたいという娘がこの頃は相当沢山いる、そういう女でもさがそうじゃないか。そういう言葉が平然といわれている状態です。若い女のひとの興味趣味などに沿う・・・ 宮本百合子 「現実の道」
・・・民法は、事情によって父親が受ける月給の半額までの扶助料を子供が十八歳になる迄支払う義務を決定している。 万一、男が更に非ソヴェト市民的で、扶助料支払いをいやがり、行衛をくらました時、例えばターニャはどうするか。彼女ひとりの収入ではとても・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・ 其だから、何か良人の欠点を掴って、其を訴訟の材料として扶助料を取った方がよいと思う。其処で、彼女は嘗ては愛情を表現するのに、どうしたらよいだろうと思いなやんだ同じ胸で、今度は、どうしたら、彼を怒らせ、自分に手をあげさせ、その挙げたまま・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・住居のこと、収入と物価、夫婦二人のほかに家庭的な扶助の責任の問題。共稼ぎの必要、その必要には余り不備な今日の社会施設。もし健康に自信のない妻であるならば、共稼ぎと主婦の労苦を二重に負って病気したとき、その不安は誰が分担してくれるであろう。・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
・・・ たとい若し、彼女の最初の婚約が全然絶望的なものと成った当時、既に、自力によって一定の収入を得る総ての女性間に、経済的相互扶助機関が確立しているとしたら、どうなったでしょう。 収入の幾割かを皆が積立てて、その適当な運用、利殖によって・・・ 宮本百合子 「ひしがれた女性と語る」
・・・の経験を通じて愛し合うようになり、結婚しようとする若いひとくみの男女が互の間では、随分進歩した協力的な生活設計を考えられるとして、二人ともが失業した場合、また結婚しても、どちらかがあいての親たちの生活扶助をつづけなければならないようなとき、・・・ 宮本百合子 「文学と生活」
・・・その頃の工場には政党も、協同組合も相互扶助金庫もなければ、どんなアジテーションもプロパガンダも行われなかった。」十六歳だったシャポワロフは、原始キリスト教の理想を実現して、貧富の相異が消せるかと思ったのであった。 ゴーリキイがカザンで、・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・ところが昔ながら赤い車輪の辻馬車は、仲間で相互扶助的な組合をこしらえているが、生産手段を自分でもっている個人営業だ。馬、馬車、両方持っているか、馬は自分ので馬車だけ借りるか。――交通労働者として職業組合には属していない。СССР全経済組織は・・・ 宮本百合子 「モスクワの辻馬車」
・・・それは学校教員・警察官その他待遇職員の未亡人たちが遺族扶助料をもらいながら再婚し、しかも扶助料をとりあげられぬため、内縁関係にしているのがおびただしい数にのぼるので、東京府の恩給掛はこの際徹底的に調べて、内縁でも再婚している未亡人の扶助料は・・・ 宮本百合子 「私の感想」
出典:青空文庫