・・・それは俳句には限らぬが、総ての技芸について見ても、始めの稚い時は同一の団体に属して居るものはほぼ同一の径路をたどって行く。例ば書方を学ぶにしても同じ先生の弟子は十人が十人全く同じような字を書いて居るが、だんだん年をとって経験を積み一個の見識・・・ 正岡子規 「病牀苦語」
・・・ところでバルザックさんは、技芸辞典かドイツ哲学史提要か自然科学辞彙かのようなもの言いをする。たまたまそういう暗号のような言葉を使わない時には、猥らなことを言ったり大声で叫んだりする労働者のバルザックが姿を見せる。それからとうとう芸術家のバル・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・と言っているが、ここで勧められているのは、文芸を初め諸種の技芸である。しかもその勧めは、前にあげた兼良の『小夜のねざめ』と同じく、平安朝の文芸を模範とした教養の理想のもとに立っているのである。それを説いているのが戦国末期の勇猛な武士であると・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫