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・・・「また担ぐんじゃない……」「まア、聴け……」 そして亀吉の喋ったのは、こうだった。 ――昨夜、亀吉は大阪駅の東出口の荷物預り所で、脊中の荷物を預けている復員軍人を見た。 亀吉は何思ったか、寄って行って、その復員軍人が、カ・・・
織田作之助
「夜光虫」
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・・・「お玉はこのおばあさんを担ぐつもりずらに」 とおげんは笑って、あまりに突然な姪の嬉しがらせを信じなかった。 しかし、お玉が迎えに来たことは、どうやら本当らしかった。悩ましいおげんの眼には、何処までが待ちわびた自分を本当に迎えに来・・・
島崎藤村
「ある女の生涯」