・・・ 時間の尺度の変更は、同時に、時間を含むあらゆる量の変更を招致することはもちろんである。まず第一に速度であるがこれは時間に逆比例する。運動量も同様である。しかし加速度となると時間の自乗に逆比例するから時間のほうが二倍に延びれば加速度は四・・・ 寺田寅彦 「映画の世界像」
・・・もしも、いつも半分風邪を引いているのが風邪を引かぬための妙策だという変痴奇論に半面の真理が含まれているとすると、その類推からして、いつも非常時の一歩手前の心持を持続するのが本当の非常時を招致しないための護符になるという変痴奇論にもまたいくら・・・ 寺田寅彦 「変った話」
・・・ きわめて大ざっぱに考えてみると、当初の緊張が主として理知的でありあるいは道徳的である場合には笑いを招致しやすく、これに反して緊張が情緒的または本能的である場合に泣くほうに推移しやすいのではないかと思われる。 大山鳴動して一鼠が飛び・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・それにもかかわらず、うかうかとそういうものに頼って脚下の安全なものを棄てようとする、それと同じ心理が、正しく地震や津浪の災害を招致する、というよりはむしろ、地震や津浪から災害を製造する原動力になるのである。 津浪の恐れのあるのは三陸沿岸・・・ 寺田寅彦 「津浪と人間」
・・・複雑な環境の変化に適応せんとする不断の意識的ないし無意識的努力はその環境に対する観察の精微と敏捷を招致し養成するわけである。同時にまた自然の驚異の奥行きと神秘の深さに対する感覚を助長する結果にもなるはずである。自然の神秘とその威力を知ること・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・きわめて卑近の一例を引いてみれば、庭園の作り方でも一方では幾何学的の設計図によって草木花卉を配列するのに、他方では天然の山水の姿を身辺に招致しようとする。 この自然観の相違が一方では科学を発達させ、他方では俳句というきわめて特異な詩を発・・・ 寺田寅彦 「俳句の精神」
日本へオリンピックを招致しようとしたときの雰囲気を思いおこします。日本へよばなければ意地でも承知せぬという気分が示されていたことがきつく印象されています。何の意地によってそのやめられるのでしょうか。はじめにも終りにもある無・・・ 宮本百合子 「オリンピック開催の是非」
・・・一九四〇年の第十八回大会日本招致は、日本代表の努力によってオリムピック大会東京開催と年を同じくして決定された。 この決定に因んで、日本ペン倶楽部は日本独自の立場を持つものであるが、同時に、「文学と文学者達との間に決議された事項は文学を主・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・を完成し、国際ペンクラブ東京招致に成功したりしているのは、その実際の生き方において透谷とは対蹠的な方法を選んだ計画性のためであることも、また、私どもにつたえられている日本文学の財産の性質を吟味する上に意味ふかいことである。 今日のヒュー・・・ 宮本百合子 「十月の文芸時評」
・・・ 四年後のオリンピック東京招致に亢奮した感情や、今回のベルリン・オリンピックに出場した日本選手に対する感情、又一般にひきくるめて日本の役人たちがオリンピックに対して一般民衆の感情を向けようとして煽り立てたその方向や現実の結果について・・・ 宮本百合子 「日本の秋色」
出典:青空文庫