一 君は僕を誤解している。たしかに君は僕の大部分を解していてくれない。こんどのお手紙も、その友情は身にしみてありがたく拝読した。君が僕に対する切実な友情を露ほども疑わないにもかかわらず、君が僕を解して・・・ 伊藤左千夫 「去年」
・・・短篇集は、いずれゆっくり拝読させて戴くつもりです。まずは、御礼まで。草々。 十八日井原退蔵 木戸一郎様 一枚の葉書の始末に窮して、机の上に置きそれに向ってきちんと正坐してみても落ち附かず、その葉書を持って立ち上り・・・ 太宰治 「風の便り」
・・・歴史文学所載の貴文愉快に拝読いたしました。上田など小生一高時代からの友人ですが、人間的に実にイヤな奴です。而るに吉田潔なるものが何か十一月号で上田などの肩を持ってぶすぶすいってるようですが、若し宜しいようでしたら、匿名でも結構ですから、何か・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・貴翰拝読いたしました。ひとにものを尋ねる時には、も少していねいな文章を書く事に致しましょう。小国民の教育をなさっている人が、これでは、いけないと思いました。 御質問に、まじめにお答え致します。私はいままで、ダダイズムを自称した事は一度も・・・ 太宰治 「新郎」
・・・「お葉書拝読。四日深夜、を、ことさらに引用して、少し意地がわるい。全文のかげにて、ぷんぷんお怒りの御様子。私、おのれ一個のプライドゆえに五円をお願いしたわけではなかったのです。わが身ひとつのための貪慾に非ず、名知らぬ寒しき人に投げ与・・・ 太宰治 「二十世紀旗手」
・・・大谷尊由に対談して、長谷川「歎異鈔なんか拝読いたしますと『善人なをもて往生をとぐ、いはんや悪人をや』と書いてありますから、吾々共産党だった者でも努力をすれば救われるでしょうか」という質問を出している。この実例は、文化面においてないがしろにで・・・ 宮本百合子 「新年号の『文学評論』その他」
野上彌生子様 私が女学校の五年生であった頃、多分読売新聞に御連載に成った「二人の小さいヴァガボンド」を、深い感銘を以て拝読して以来、御作はいつも、密接な心的関係を保って、今日に至っております。 それは勿論、貴女が自・・・ 宮本百合子 「野上彌生子様へ」
出典:青空文庫